子どもが成長するにつれ、気になり始めるのが「教育費」。大学卒業するまでにかかる費用は、1000万円とも2000万円ともいわれます。
実際に教育資金は、いくら貯めておくことが必要なのでしょうか。小学校入学前に貯めておきたい目安は? 家計再生コンサルタントの横山光昭さんにお伺いしました。
PROFILE 横山光昭さん
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は23,000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。
高校まで公立なら、教育費の総額は1200万円弱
教育資金を貯めるにあたって、まず「大学卒業までにかかる教育費の総額」を知ることから始めましょう。どのタイミングで私立に通わせるかによって総額は大きく異なるので、一般的な目安を紹介します。
文科省の2018年「学習費調査」によると、年間の学習費の平均は公立小学校に通った場合が年間32万1281円、公立中学校の学習費の平均は年間48万8397円、公立高校は年間45万7380円です。12年間の合計額は約475万円です。
これに大学の費用がかかってきます。日本政策金融公庫の2019年「教育費負担の実態調査」によると、私立大学に通った場合の教育費の総額は717万円でした。この2つを足すと「高校までは公立で、大学のみ私立に行く」場合の総額は1200万円弱です。
ただ、高校まで公立に通えば学習費はあまりかかりません。また、文科省の数字は塾や習い事も含まれていますが、自治体が主催するスポーツ教室のような料金の安いものを活用すれば、費用は抑えられます。
そう考えると、子どもが小さいうちから、あせって教育費を貯める必要はありません。少なくとも小学校入学前までに、教育費だけを特別に貯める必要はないでしょう。
大学入学時に必要な最低200万円の貯め方とは?
教育関係の出費で最もまとまった金額がかかるのは、大学に入学した時。入学金や前期の授業料、すべりどめの大学に払う入学金などがかかります。教育費は、この時期を目指して貯めておけば良いでしょう。
金額の目安は、最低で200万円。地方から上京して都心の大学に進学し一人暮らしをするという場合は、アパートの敷金・礼金や引っ越し費用を考えて、あと100万円ほど多めに貯めておくと安心です。
残りの学費も貯めておくに越したことはありませんが、大学に入学してから工面するのでも間に合います。
教育資金を貯める方法は、預貯金をベースにして一部はつみたてNISAなどを使って貯めるというのもひとつの手です。
かつては、大学の入学資金は学資保険で貯めるのが定番でした。しかし、今は満期時の返戻率が低く、払い込んだ保険料の総額よりも少ない金額しか戻ってこないケースも少なくありません。
おすすめは、「児童手当に手をつけず、貯めておくこと」。現在、児童手当は3歳未満が月1万5000円、3歳~中学卒業までが月1万円ですから、すべて貯めると総額で198万円。それだけで、大学入学時に必要な金額がしっかり貯められます。
子どもが小さい時の「教育費のかけ過ぎ」に注意!
これまでの家計診断の経験からいうと、むしろ気をつけたほうがいいのは「教育費のかけすぎ」です。
「子は宝」と、お金をかけたくなるのはわかります。けれど、小さな頃から塾や習い事に行かせ、小学校や中学校から私立に通わせた結果、“老後の資金がない”という相談は少なくありません。
また、高校までに教育費をかけすぎて、大学入学時に手元のお金が足らなくなり、ほぼ奨学金や教育ローンを利用することになるケースも見かけます。それらは利息を支払わなければなりませんから、余計な出費が増えることになります。
弊社では23,000件の家計相談から、手取り月収の中の理想的な教育費の割合を導き出したのですが、目安は5~6%。最大でも10%が限界です。
月収40万円の家庭だとしたら、月2万円~2万4000円です。これ以上かけるのは身の丈に合っているとはいえません。
それでも「もっと教育費をかけたい」ということであれば、子どもの教育だけでなく、老後の資金やマイホームの購入資金などもトータルで見て、「我が家は、教育費にどれぐらい使えるのか」を冷静に計算しましょう。
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文/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ