「ママなのに仕事優先」の罪悪感
一方で、逆パターンもあります。
会社員の志村景子さん(仮)は、自営業の夫と小4の娘の3人暮らし。志村さんのほうが収入が高いこともあって、平日の家事はこれまで夫がメインで担当してきたそうです。
ところが、コロナ禍によって志村さんが在宅勤務に切り替わった結果、“家にいるのに家事をしない妻”という自分のあり方に罪悪感が湧いてきたといいます。
「これまではそれぞれが各自の場所で本分を全うできていたので、夫が主夫兼自営業という形で家事をやってくれることを、夫婦ともに肯定的に捉えていたんですね。
でも今回のコロナ騒動がきっかけで、私もずっと家にいることになり、“仕事をしているから家事はできない、ごめん”というスタンスでいること自体がしんどくなってきて…」
成長した娘さんの視線も気になってきたといいます。
「娘の目に、『仕事ばっかりして家事をしないママはどう映っているんだろう?』とつい考えてしまう自分がいる。家族との距離感が平時より近くなったことで、自分の中でくすぶっていた“簡単に消し去れないジェンダーの固定観念”が再び浮き上がってきた実感があります」
大黒柱になっても、“女だから”感じる居心地の悪さがある。
簡単に消し去れないジェンダーの固定観念は、誰の心の中にも根を張っているはず。
第一波が落ち着いた今、コロナ禍が浮き彫りにしたジェンダーの思い込みや夫婦のあり方を見つめ直してみてはどうでしょう。
次に同じような事態が起きたら、夫婦でどんな協力体制を取っていける? どうすれば母親ばかりが心身を削らずに済む? 一人じゃどうしても無理なこと、パートナーにフォローしてほしいことの優先順位は? 学校や保育園が再開してほんの少しでも心の余裕ができたら、ぜひ腰を据えて、夫婦で話し合ってみてください。
その積み重ねがきっと、いずれ訪れるであろう第二波、第三波の備えにもなるはずです。
文/阿部 花恵