望んでママになったはずなのに…ふとした瞬間に「ママをやめたい」と感じてしまう。そんな自分が自分で許せない──仕事に加えて子育ての重圧に押し潰されそうになりながら、行き場のない感情を抱える女性が増えています。
そんな時代を背景に、CHANTOがお届けする5月の特集は「ママを休もう」。第4回目は、映画『ママをやめてもいいですか⁉』の監督・豪田トモさん×プロデューサー・牛山朋子さんご夫妻にインタビューしました。
公私ともにパートナーとして、映画づくりも子育てもしてきた豪田トモさんと牛山朋子さんご夫妻に、ママとパパがもっとラクになるためのコミュニケーションのコツや、サポートのあり方を聞いていきます。
PROFILE
豪田トモさん
映画監督。1973年、東京都生まれ。6年間の会社員生活を経て、カナダで映画製作の修行を積む。帰国後は映像クリエイターとして活躍。命と家族をテーマにしたドキュメンタリー映画『うまれる』『ずっといっしょ』は90万人以上を動員している。最新作『ママをやめてもいいですか⁉』は6月末までオンライン上映中。
牛山朋子さん
映画プロデューサー。1972年、埼玉県生まれ。大学在学中に起業後、2000年に楽天株式会社に入社。2007年、アソシエイトプロデューサーとして日米合作映画に携わったことをきっかけに、映像の世界に転身。豪田監督作品ではすべてプロデュースを務めている。豪田トモさんとは公私ともにパートナーとして、小学生の女の子を育てている。
ママをやめたくなるのは「さしすせそ」の「さ」が足りないからかも
──豪田さんが監督された映画『ママをやめてもいいですか⁉』には、それぞれの悩みを抱えながら子育てに奮闘する、リアルなママの日常が描かれています。なぜこのような映画を作ろうと思ったのですか。
豪田さん:
産後うつを経験したママやご家族を取材し、ママたちの閉塞感を知ったことがきっかけです。「子育て中のママの現状を伝えないと、この国は大変なことになるぞ」と思いましたね。
──映画冒頭で、77%のママが「ママをやめたい」と思ったことがあるというデータが紹介されますが、これは、CHANTO WEBの読者アンケートとほぼ同じ割合。幸せなはずの子育て中に、なぜ「ママをやめたい」と思ってしまうのでしょうか。
豪田さん:
わかりやすく言うと「さしすせそ」に原因があることが多いですね。
『ママをやめてもいいですか!?』と思いたくなってしまうのは、状況を可視化できていないから。特に子どもが小さい頃は忙しくて状況を整理する暇もなく悶々とした気持ちだけが積もっていく。「なんだかツライ…」と思ったら是非、この「さしすせそ」を思い出してみてください。
ママをやめたい…ときにチェックしたい「さしすせそ」
- さ=サポートが不足している
- し=社会の理解が不足している
- す=ストレスがたまっている
- せ=人に頼りにくい性格
- そ=育った環境により自尊心が低い
ママが笑顔でいられないときには、この「さしすせそ」に原因があることが多いのですが、いちばん大きいのはやはりサポートです。特にパートナーからの十分なサポートや理解が得られているママは、あまり『ママをやめてもいいですか!?』とは思わない傾向が強いですね。
牛山さん:
うつになった人や、そこまでいかなくても産後つらい思いをした人に共通しているのは、「人に頼りにくい」ということ。この「人に頼りにくい」には、環境以外にママ自身の性格にも原因があります。特に「母親はこうあるべき」とか、「母乳で育てなきゃ!」といった「こうあるべき」という思いが強い人ほど、人に頼れなくなりがちです。
まぁ、そういう、もともと「頼りにくい性格」の人も何とかしてパートナーには助けを求めるのだけれど、やっぱり助けてくれないじゃない!という不満もあるでしょうね…。
豪田さん:
パートナーに助けを求める場合、ちゃんと表現しているつもりなのに伝わっていなかったり、1回頼んだら嫌な顔をされて頼みづらくなったりするケースも多いですよね。そういう場合でも、できればあきらめずに2回、3回、場合によって何十回と、助けを求め続けてほしいですね。もしかしたら、「この人にはどうしたら伝わるか」を分析・研究することも必要かもしれません。それが子育てだけでなく、人生のあらゆる場面で自分を守ることにつながります。
牛山さん:
自分の弱いところやできないことをさらけ出すと、助けてくれる人が必ず現れます。ひとりでがんばりすぎないで、場合によってはパートナー以外の周囲の人たちにも助けを求めてほしいですね。
豪田さん:
僕は「ママ友さがしは宝さがし」だとよく言うのですが、パートナーのほかにも、家族や友達にサポートを求めるのもいいと思います。自分をサポートしてくれるコミュニティは多ければ多いほど心強いですよね。