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歳、40歳ごろを境によく聞かれるのが、年齢にまつわる全身の悩み。 鏡を見ればシワやシミなどの肌老化が気になり、仕事や育児や家事をしていても「なんか疲れやすい」「調子が悪い」と感じるようになります。このペースで老化が進んだら、この先いったいどうなるの⁉ と不安になることも。 そこでアンチエイジング医療と遺伝子研究を専門とする日比野佐和子先生に、医学的根拠のあるアンチエイジング法について教えていただきました。

 

《取材協力》日比野佐和子先生 日本抗加齢医学会認定専門医、医学博士。Y’sサイエンスクリニック統括院長、大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学特任准教授。基礎研究から最新の美容医療に至るまで幅広く活躍し、テレビ番組でも、わかりやすい解説で好評を博している。

全身の細胞は「幹細胞」からつくられる

 

アンチエイジングの基礎となるのが、細胞についての正しい理解。人の細胞は、全身でおよそ37兆個あります

(※1) この細胞が加齢とともに衰え、正常に機能しなくなってくるのが、いわゆる「老化現象」です。

 

細胞はつねに修復され新しく生まれ変わっていますが、それにも限界があります。年齢とともに、若くて元気な細胞より、損傷した細胞のほうが多くなってきます。 一方で人の体には、各組織、臓器を構成する多様な細胞のもととなる〝幹細胞〟があり、全身に新たな細胞を供給しています。幹細胞は、再生医療の分野でも注目されている領域。 しかし、幹細胞自身も老化から逃れることはできず、この幹細胞の老化をいかに防ぎ、活性化させるかが、全身の老化を遅らせるカギとなります。


幹細胞は大きくふたつに分けられ、ひとつは、決まった組織や臓器を修復、再生する「組織幹細胞」です。 もうひとつは、ES細胞(胚性幹細胞)のように、人の体のどのような細胞でもつくり出せる「多能性幹細胞(Pluripotent Stem Cell)」。


こうした幹細胞の性質を利用し、「再生医療」という新しい治療法が、現在、注目されているのです。

 

PIXTA/xiangtao 

 

「幹細胞を活性化するには、幹細胞が存在する環境〝ニッチ

(微小環境)〟をよりよい状態に保つことが必要です。これは健康長寿の秘訣であると同時に、シワ、シミなどの肌老化や、血管、筋肉の老化などによる不調の改善にも役立ちます。 反対に『最近、急に老けた気がする』という人は、幹細胞がダメージを受け続け、減少してしまっているかもしれません。 最近では幹細胞を増やすための美容医療も注目されていますが、毎日の生活習慣を見直すだけでも、幹細胞の活性化につながります。まずは細胞の修復と再生に密接にかかわっている〝睡眠習慣〟を見直すことから始めましょう」(日比野先生)