新型コロナウィルスの感染拡大予防措置として、全国的に小中学校の休校が続いています。学習の遅れをカバーするため、教育コンテンツを配信提供する自治体も出てきました。私たちの働き方だけではなく、子どもたちの学習スタイルも今、転換期を迎えているのかもしれません。
でも、「オンライン学習って本当に身につくの?」「操作が難しそう。ITに疎いから家庭でサポートできるか不安」など、未知の学習スタイルに戸惑う人も多いのではないでしょうか。
コロナ禍で、にわかに身近になった「オンライン学習」。その歴史と実態を知り、理解を深めていきましょう。
特集「教育の新潮流・オンライン学習が知りたい」の第1回目は、「小学生のオンライン学習の歴史と実情」について。映像授業を積極的に活用してきた中学受験塾啓明館の塾長・後藤卓也さんにお話を伺いました。今後ますますポピュラーになっていくオンライン学習。親は経緯や活用法をしっかり知っておくことが大切です。
PROFILE 後藤卓也さん
東京都・神奈川県を中心に展開する中学受験塾の啓明館塾長。指導歴30年を超える首都圏受験界のカリスマ。著書「秘伝の算数」「新しい教養のための理科」は、中学受験を目指す子どもたちのバイブル。
オンライン学習を導入するに至った経緯、コロナ禍で発揮した強み
──新型コロナウイルスによって休校を決めた際、数ある中学受験塾のなかでも啓明館(旧・啓明舎)はいち早く授業を映像配信に切り替えることを決定。保護者や生徒へのスムーズなフォローも際立っていました。なぜそうしたことが可能だったのでしょうか。
後藤さん:
啓明館の対応が早かったのは、株式会社さなる(啓明館や佐鳴予備校を束ねる企業)の佐藤イサク理事長が、「まず命を守ることを最優先にしろ。政府が方針を立てたのであれば、即座にそれに沿って動くべきだ」と判断したからです。塾が国や自治体と足並みをそろえないと、子供たちは不安になりますし、大人に不信感を抱いてしまいますからね。
加えて、さなるグループにはもともと小学校低学年向けから大学受験まで映像授業のコンテンツがすでに揃っていたことも大きかった。中学受験用の授業だけでも4教科、4年生から6年生までの3学年分すべて映像化してありました。算数だけで250タイトル、合計200時間分以上あります。これだけの量を急には用意できないでしょう。
ただ、映像授業があっても、生徒に「これを見ておきなさい」と配信するだけではうまくいきません。子供たちの生活リズム・学習リズムを崩さないよう、テレビの番組表のように決められた時間に配信し、みんなが同時に授業を受けている雰囲気を出すとか、教師からの応援メッセージ動画を届けるといった工夫もしています。
また、4月上旬からは、小学6年生は週4日毎日3時間半ほど、普段の塾の授業と同じ時間だけZoomを使って授業をしています。6年生は14クラスあるので、曜日と時間帯を調整してクラス担任の教師が、すべての授業を担当しています。5年生以下の授業や保護者会も、間もなくZoomを使ってスタートすることになっています。
完全な双方向性の授業を実現するためにはまだ少し時間がかかるかもしれませんが、Zoom授業の出席率はほぼ100%、保護者からも「タブレットの前で授業が始まるのを楽しみにしています」というメールをたくさんいただいています。