05-ch170901-003

 

毎月、日本テレビの解説委員・岸田雪子さんによる「働くママが知っておきたいこと」をお届けしているこの連載。今月は文部科学省にお邪魔し、初等中等教育局長の高橋道和さんに、「日本の英語教育がどう変わっていくのか」とことんお話をうかがいました。

 


岸田’s Voice
何歳からどのくらい英語を学んだらよいのか? 親としても悩みますね。東京オリンピックに合わせて小学校の英語の授業も本格化。先生たちをふやすなど、準備も進んでいます。


 

Q小学校の授業はどう変わるの?

A.来年春から、3年生以上で英語の授業数がふえ
 2020年度からは5〜6年生で「教科」となり、「成績」もつきます

 

11newsgraph01

すでに「外国語活動」として英語を扱っている小学校もありますが、来年の春からは、3年~6年生で年15コマ授業数が増加。2020年度からは新しい学習指導要領が全面実施となり5~6年生は「外国語科」に。

 


 

Q.アジアやヨーロッパの国々と 比較した日本の英語教育は?

A.10年遅れていると言わざるを得ません

11newsgraph02

 

日本では、「まず日本語を学ぶことが先」という声が根強かったこともあり、英語教育は諸外国にくらべて導入が遅れていました。

 


 

Q.小学校の英語教育で課題とされているのは?

A.公立の小学校の先生の「英語の指導力」が課題です

11newsgraph03
出典:文科省平成28年度「英語教育実施状況調査(小学校)の結果」より

小学校の教員免許取得のための科目に現在、英語はなく「英語は苦手」という先生が多いのが実情です。「自信がない」まま、「外国語活動」を教える先生も。

 


来年春から「英語活動」がふえ2020年度から「成績」も

岸田 東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を境に、日本の英語教育システムも大きく変わろうとしています。それに先駆け、来年の春からは、英語の授業数が全国的にふえることになりますね。国としてのねらいは、どこにあるのでしょう?
高橋 日本のグローバル化が急速に進んでいることがありますね。コミュニケーションのツールである外国語、特に「英語」を学ぶ重要性は非常に高まっています。
岸田 東京オリンピックでは、英語が話せるボランティアは、延べ9万人必要とも言われていますしね。で、気になるのは、何を、どのくらい学ぶか、です。今も全国の公立小学校で5年生以上は英語の授業が必修となっています。
高橋 今の5~6年生は週1コマ、年間にすると35コマの英語の授業があります。ただこれは、「教科」ではなく「外国語活動」なんです。
岸田 「外国語活動」では、教科書がなく、かわりに国が配布している教材やプリントを使ったりして、成績が数値でつかないのですね。学校によっては、すでに低学年からとり入れているところもありますが、来年春からは、その「活動」の授業数が全国でふえるのですね。
高橋 ええ。来年4月からは3~4年生は、15コマの「外国語活動」が始まり、5~6年生も、今より多い、1年で50コマの「外国語活動」の授業となるわけです。3~4年生は、「聞くこと」と「話すこと」を中心に英語に慣れ親しみます。際立ったことがあれば、評価は文章で記載します。そして5~6年生の授業では、「教科」としての内容も扱いはじめます。
岸田 5~6年生は来春から「読む」「書く」も始めるのですね。
高橋 はい。2020年度から学ぶ内容を前倒しして、「読む」「書く」も15コマは扱うことになります。ただ、正式に「教科」となり、「数値による評価」が行われるのは2020年度からです。それまではこれまでどおり文章で評価します。2020年度からは、3~4年生は今の5~6年生と同じ、35コマの「外国語活動」。5~6年生は、年に70コマの英語の「教科」として授業を受けることになります。
岸田 成績がつくのですから、テストもあるわけですね。ペーパーテストだけでなく、スピーチのテストなども出てくるでしょうか。
高橋 どう評価するかは各学校が決めることですが、言語を学ぶのですから1回のテストだけではなく、単元や題材のまとまりの中で評価することが適切でしょうね。
岸田 なるほど。中学生たちに聞いたアンケートを見ると、「小学生のころから英語で『読み・書き』もやりたかった」という声が多くて、子どもたちの意識の高さに驚かされるほどです。ぜひ「英語は楽しい」と思えるような授業やテストにしてほしいですね。

中学校の英語も大学入試の英語も大きく変化

岸田 小学校英語が変わるのは、中学、高校、大学入試の英語が変わるのと連携しての改革ですね。
高橋 ええ。中学校では2021年度から、「英語で授業を行う」ことが基本となります。さらに大学入試では2020年度から、外部の「検定試験」を活用して、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの技能を評価することになります。
岸田 「英検」や「TOEFL」などの民間の試験の結果を大学入試に活用するのですね。今の子どもたちは、読む」と「聞く」はできるけれど「話す」と「書く」が苦手、といわれています。
高橋 そうなんです。ですから、これからは、4つの技能をバランスよく育てていくことを重視しています。
岸田 大学入試も見すえて難易度が上がってくる、となると、あせりを感じる親御さんもあるかもしれません。学校の授業だけで、塾などに行かなくても、新たな大学入試に対応できる英語力はつくのでしょうか?
高橋 大丈夫です。仮に小学校3年生で初めて英語にふれるお子さんでも、カリキュラムに従っていけば高校卒業までにはバランスのいい4技能が身につくようなシステムになっています。その点はどうぞご安心ください。もちろんそれは、お子さんが一生懸命勉強をすることが前提になりますが(笑)。

小学校の先生たちの「英語指導力」が課題

岸田 もうひとつ気になるのは、教える側、つまり先生たちの課題です。小学校の先生は、英語の教員免許を持っていない方が多いですよね。はたして4技能を教えていけるのか、不安があります。
高橋 そこは大きな課題なんですね。まず、教員の養成課程については、2019年度以降に入学する学生には、英語のカリキュラムが加わることになりますから、彼らが卒業して先生になるときには、すべての新任教員が英語の指導力を身につけていることになります。
岸田 そうなると、あと6年後からは改善される、と。それまでのあいだが、特に課題ですね。
高橋 小学校の先生方には、さまざまな研修を受けてもらったり、地域ごとに配置された「英語教育推進リーダー」が講師役となって、各学校で指導の中核となる先生に研修を実施する取り組みを進めています。また、小学校の現職の先生が、中学校の外国語の免許を取得できるよう、講習を行うことも支援しています。
岸田 採用するときに、英語の資格を持つ人を優遇する、という教育委員会もふえているようですね。外国人の「ALT」が担任の先生と一緒に英語を教える、という学校もふえています。

 


用語解説:ALT

外国語指導助手Assistant Language Teacherの略。日本人の先生を補助する、英語を母国語とする外国人のこと。世界の英語圏から、大学を卒業した青年を日本に招致する国の事業で、全国の公立小学校で1万2000人以上が教えている。


 高橋 ええ。あとは先生が発音に不安があるようならデジタル教材やYouTubeに掲載した映像資料なども活用してもらえたら。さらに文科省としては、専門性をもった「専科教員」もふやそうとしています。今後3年間で、小学校の専科教員を6600人ふやそうと動いているところです。


岸田 6600人すべて英語の先生ですか?
高橋 いえ、理科や体育の専門の先生を置いてもいいのですが、実際は英語の先生を配置する自治体が多いだろうと思っています。6600人いれば、2020年からの3年生以上の英語の授業がふえるコマ数を専科教員が担える計算なので、現場の先生の負担を極力おさえることができると思っています。これは、先生の「働き方改革」でもあるのです。先生が授業に集中できるように、いろんな人がカバーしていかないと。
岸田 そうですね。小学生たちは英語への好奇心も高い「入り口」の世代ですから、楽しくイキイキした授業づくりを期待したいです。

 


 

●お話をうかがったのは

文部科学省・初等中等教育局長
高橋道和さん

東京大学教育学部卒業後、旧文部省に入省。文化庁芸術課などを経て、'15年にスポーツ庁次長に。7月11日より現職、子どもたちの英語教育改革にも携わる。

 

【プロフィール】日本テレビ解説委員


岸田雪子さん日本テレビ報道局で記者歴10年を経て、報道キャスターに。『スッキリ‼』、『情報ライブ ミヤネ屋』、BS日テレ『深層NEWS』などに出演し、現在は解説委員として活躍。同じ会社に勤務する夫と、小4の長男の3人家族。仕事、家事、育児に加えて、実母の介護にも奮闘中。日本テレビのママサークル「ママモコモ」でも活動している。

Facebookページ「ママチョイニュース」でも、役立つニュースを日々更新中です!