すべての子どもたちが健やかに暮らせる社会になってほしい。そう思っていても、虐待の報道は後を絶ちません。

 

そんな中、お父さんお母さんを支える取り組みにも注目が集まっています。

 

精神科の看護師らでつくる日本精神科看護協会(日精看)は、支援が手薄になりがちなお父さんの気持ちに寄り添って支える冊子「パパカード」を作成・配布しています。

 

なぜ「お父さん」に注目したのか。パパカードとはどういう冊子なのか。

 

パパカードの作成に関わった日精看の業務執行理事で看護師の草地仁史さんに聞きました!

「お父さんになるんですね、 おめでとう!」基本的な問いかけから始まる

草地仁史さん

──パパカードとはどんなものですか?

 

草地さん

もともとフィンランドでDV支援を行なっている団体が考案したもので、約10年前から利用されています。許可を得て翻訳し、20194月から配布を始めました。

 

内容としては4つのカードで1セットになっており、No.1の「お父さんになるんですね、 おめでとう!」では「こころの準備はどのくらいできていますか?」など基本的な問いかけから、出産前にお父さんができること、育児と仕事の両立について準備しておいてほしいことのアドバイスなどを掲載しています。

 

No.2では子どもとの向き合い方、No.3では「お父さんも自分を大事にしよう」とストレスを溜めないよう呼びかけるなど、子育てに関わる際にお父さんが悩みがちな部分に寄り添う内容になっています。

 

──お母さんたちのストレスや悩みについては病院や行政の支援でも触れられることが多いですが、お父さんに対する支援はあまり聞かないですね。なぜ、日本版のパパカードを作成したのでしょうか?

 

草地さん

精神医療の現場では、支援対象者の背景に虐待の問題を抱えていることも少なくありません。

 

特に我々はこころの健康を専門にしている看護師の団体ですから、患者さんが虐待を経験している、ということも、考えないわけにはいかない。そのため「なんらかの支援をしたい」という気持ちは以前からありました。

 

パパカードを配布することになったきっかけは、前会長がフィンランドを訪問した際に興味を持ったことです。調べてみると、日本ではお父さんの支援をしているツールが見当たらない。ならばすでにフィンランドで実績のあるパパカードを広めようと考えたんです。

 

大学関係者や子育て支援の関係者、児童相談所の職員などがチームになって取り組みました。

 

──お母さんへの支援と違う部分というのはどういうところだと感じますか?

 

草地さん

人によって差はありますが、女性は妊娠したと分かった時から、子育てに関する知識を得る機会が男性より多いと思います。

 

もそうでしたが、お父さんってそういう機会があまりないですよね。一方で社会の意識が変化していく中で、子育てを「やらなきゃいけない」っていう意識は高くなって。その間で、どうしたらいいか分からない、という男性は少なくないと感じます。あと、男性は相談するのが苦手な人も多いのではないでしょうか。