家事・育児のハードルの高さに悩む女性たち
「日本はそもそも、家事・育児のハードルが高いですよね。
家族のために彩りにも栄養価にすぐれたお弁当をつくって、何品ものおかずを食卓に並べて…親世代は大半が専業主婦でしたから、それでよかったかもしれません。
でも現役で働くいまの私たちが、それと同じ家事・育児をおこなうのはムリ。まずは目標設定を現実的なものに変えることが重要です」(中島先生)
とはいえ、ここにひとつ大きな落とし穴が。 「母親は、つねに子どものことを優先すべき」「愛情をこめて、手間ひまかけた料理をつくるのが当然」といった親世代の価値観が、私たちのなかにも残っていることです。 そのため、〝自分がしてもらってきたことを、子どもにしてあげられない〟という罪責感に苦しむ女性も少なくないそうです。
「母親としても、妻としても中途半端。仕事だってそう。そんな思いに、多くの女性が悩まされています。
しかも、独身時代や出産前のキャリアを手放すケースも多く、〝こんな仕事、好きでやってるわけじゃない〟という思いを抱える人もいます。
そして気がつけば、家族にも職場の人にも謝ってばかり。そんな状況では自尊心も低下しますし、ストレスからうつ病になりやすいのも当然のことといえます」(中島先生)
認知行動療法で、自分を苦しめる価値観を変える
親世代の価値観を受け継いでいるのは、女性ばかりではありません。男性のなかにも「女性は子どもとの時間に幸せを感じるもの」といった価値観が、まだまだ残っています。 「たまには自分の時間がほしいから、子どもの面倒を見て」なんてとても言えない…地域差はありますが、いまもこんな悩みを抱える女性は少なくありません。 これでは精神的に疲弊して、自分の人生や幸福を見失ってしまいます。
「女性のなかにも、男性のなかにも、幼少期から培ってきた価値観があります。
私が専門とする認知行動療法という心理療法では、これを〝スキーマ〟といいます。
親世代から引き継がれてきたスキーマを、現代の家族のありかたに合うように、柔軟に変えていけるといいのですが。
かたくななまでに抱えていると、いつも自分を犠牲にし、疲弊することになりかねません」(中島先生)