共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。今回は女性活躍推進担当を専任し、「ハッピーリターン制度」や「ハイハイン休暇」など、従業員の働きやすさや男性の育児参加などの仕組みづくりに取り組む亀田製菓を訪ねました。

女性の活躍と働きやすさを考える専任担当として


――亀田製菓では、2015年に女性活躍推進を促すための担当者が専任されたそうですね。女性の働きやすさや活躍できる風土づくりという点に課題を持っていたということなのでしょうか。

 

内山さん(亀田製菓):

亀田製菓では育児と仕事を両立してきた女性従業員も多く、ライフステージに変化があっても仕事を続けやすい会社です。男女の勤続年数はほぼ同じで、「女性の活躍」という意味ではすでに叶っているかもしれませんが、女性の働く環境をより良くするため、改善と向上に力を注ぐための専任担当者として任命されました。

 

私は新卒で入社した時から研究職として勤めてきました。研究部門「お米研究所」ではお米関連研究を中心に、おいしさ・機能性・生産技術などを研究しています。私は入社以来お米由来の植物性乳酸菌の研究を担当していましたので、女性活躍推進の担当に任命された時は驚きましたね。でもこれまで働いてきた中で、やりがいや満足感はありつつも、制度や女性従業員の働く環境などについて「もっとこうならいいのに」と思うところはあったので、それらを改善できるチャンスだと思って着任しました。

 

▲女性活躍推進担当の内山公子さん

 

――亀田製菓では、男女問わず離職率が低く、従業員の勤続年数も長いと聞きます従業員の仕事への愛着や社内環境の良さを伺えますね。内山さん自身も一児の母として子育てと仕事を両立していますが、働く女性として、会社の魅力はどのような部分にありますか?

 

内山さん(亀田製菓):

ファミリー感があって居心地が良く、男女問わず働きやすい雰囲気です。そして従業員の多くが「亀田製菓の商品が好き!」ということ。

 

生産から営業までお客さまに喜んでいただくために全員がプロ意識を持って商品と向き合っています。自分たちが安心・安全・おいしさに自信を持ってお届けする商品を、お客さまに「おいしかった!」と喜んでもらえることが仕事のやりがいであり、何よりの幸せ。他社には真似できない唯一無二の商品を作っていること、長く愛されているロングセラー商品がたくさんあることにも社員みんなが誇りを持って働いています。

 

また本社がある新潟は、共働き率が高く、女性が子育てをしながら働くためのバックアップ体制が整っている家庭が多いんです。そういう土地柄が影響しての働きやすさもあったのかもしれません。

 

本社だけでなく、全国に7箇所ある営業拠点でも働きやすい環境や仕組みを整えていくことも今後の課題です。

登録者数20名「ハッピーリターン制度」で前向きな離職が叶う


 

――退職して数年後に復帰できるという「ハッピーリターン制度」はどのようにして生まれたのでしょうか?

 

内山さん(亀田製菓):

私が女性活躍推進担当として着任したとき、全女性従業員に働き方や制度についてのヒアリングをしたんです。その時に出たのが「一度辞めても戻ってこられる制度があっても良いのでは」という意見。実際に、結婚や介護などの理由から「仕事は好きなのに辞めざるを得ない」という従業員がこれまでも多かったんです。

 

早速、制度として実現できるよう提案し、201511月、代表商品の一つである「ハッピーターン」から名前をもらった退職者復帰登録制度を導入しました。

 

――社内からの声を具現化した新制度ということですね。どのような内容ですか?

 

内山さん(亀田製菓):
ハッピーリターン制度の対象は、勤続3年以上の従業員。結婚や妊娠・出産、育児、介護、看護、病気の治療、配偶者の転勤の理由で仕事から離れざるを得ない状況にある場合が適用となります。

 

復帰期限は退職後6年です。この期限内であれば、制度申請者の希望を受け次第、優先的に復帰する道筋を会社側で整えます。

 

――制度導入後、社内からの反応はいかがでしたか?

 

内山さん(亀田製菓):

導入時は、結婚・育児を理由にした女性従業員の利用が多いのでは、と想定していました。でも実際は、「介護」「看護」「ご自身の病気の治療」などの理由で制度を利用する従業員が多く、男性も利用しています。

 

現在、ハッピーリターン制度に登録している方は20名。導入して4年ということもあって復職した方はまだいませんが、会社が嫌いではなく、「戻ってきたい」という意思があるということは、会社としても嬉しいことです。それぞれの良きタイミングでまた一緒に働けることを楽しみにしています。

女性活躍のためにも。「ハイハイン休暇」で男性の育児参加を促す


▲広域支店の木村啓紀さん

 

――男性社員の配偶者出産休暇制度「ハイハイン休暇」も、従業員の声がきっかけで導入されたそうですね。

 

内山さん(亀田製菓):

そうです。産休前と育休から復帰するタイミングで、個別に面談をしているのですが、育児をしながら仕事を続けることに不安を抱えている女性従業員が多いことに気づきました。

 

また同時に、「夫に育児を手伝って欲しいけど、仕事が忙しいようで言い出しにくい」「『職場に迷惑がかかる』と夫が育休取得に難色を示した」など、育児に参加したいが、職場に遠慮して参加できない男性の現状も窺い知ることができました。

 

女性の活躍推進は男性の働き方改革にも直結しているので、両輪で改善していかなければいけません。男性の育児参加は長期的な課題ですが、産後すぐはなおのこと奥さんと子どもとの時間を持ってほしい。このような思いから、年次有給休暇とは別に「配偶者出産休暇」を作ることに。201810月に「ハイハイン休暇」というネーミングでスタートしました。

  

――ネーミングも亀田製菓ならではで覚えやすいですね。昨年11月に第一子が生まれた広域支店の木村さんは、ハイハイン休暇制度が導入して間もなくの休暇取得だったそうですね。

 

木村さん(亀田製菓):

これまでも有給休暇は取りやすい環境でしたが、娘が生まれた直後は、ベビー用品の買い出しや、1カ月検診など子どものための細々とした用事が多く、「早速使ってみよう!」と思い立って申請しました。ネーミングも覚えやすく、社内での定着も早かったと思います。

 

ハイハイン休暇は「配偶者の産後8週の期間内」で「3日間の休暇」が付与されますが、連休として使っても良いし、分割しても良いという柔軟さがありがたかったです。「産後8週以内」という具体的な期限も、「いつか取ろう」と先延ばしにせず、「今取ろう!」という気持ちにさせてくれました。

 

奥さんからの反応も良く、「いいね!いつ取ってもらおうかな」と休みのスケジュールを率先して決めてくれました(笑)。

 

内山さん(亀田製菓):

休暇制度を導入して一年ちょっとですが、ハイハイン休暇取得率は着々と増え、現在約85%。社内でもだいぶ浸透していると思います。

 

新たな休暇制度の導入もきっかけとなり、社内で育児に関する会話が増え、「男性の育児参加が特別なことではない」という意識が高まったように感じています。

 

 

――ハイハインをプレゼントという特典もあるそうですね。

 

内山さん(亀田製菓):

ハイハインは、赤ちゃんの初めてのおやつとして人気のロングセラー商品。従業員のお子さんが生後8カ月を迎えた時期に、「お子さんのハイハインデビューを会社からプレゼントしよう」ということで、2ケース24袋を贈ることにしました。

 

木村さん(亀田製菓):

2ケース分のハイハインが届いたときに、正直「食べきれるかな」という心配はありましたが、妻がママ友と会うときに配ったり、自分の子どもも好んで食べてくれたので、あっという間に消費しています。アレルゲンも含まれていないので、小さな子どものおやつとしても安心ですね。

 

子どもが生まれてからは、より一層「家族のために頑張ろう」という意識が強まりました。今年4月から、妻の育休が明けて職場復帰をするので、育児も仕事も張り切っていきたいです!

 

 

――「女性の活躍」につながることすべてが担当範囲だという亀田製菓の女性活躍推進担当は、女性従業員だけでなく、男性従業員の声にも耳を傾けながら、女性の働きやすさを追求している様子が伺えました。「こんな制度があったらいいな」「こういう風に働きたい」を実現させる専任者の存在は、より一層、女性を生き生きと楽しく、仕事と日常に向かわせてくれることでしょう。

 

取材・文/佐藤有香 撮影/緒方佳子