© 2019「影踏み」製作委員会

 

—— 今回は、ファンタジーや恋愛要素もあり、CHANTO WEB読者にも観やすい作品になっている気がします。

 

横山さん 

私の作品は、デビュー当時は9:1で男性の読者が多かったのですが、今は5:5くらいの割合になりました。『影踏み』に関しては、女性の方が多く読んでくださっているらしいんです。他の小説でファンタジー要素を入れているものはないですし、そこも含めて実験的な試みを多く入れた作品です。この作品は映像化するのは難しいと半分諦めていましたが、篠原監督があれだけの作品に仕上げてくれたことには、本当に感謝しています。

—— ロケーションもすごくいいですよね。

 

篠原監督 

住宅街は伊勢崎、飲屋街は高崎、商店街は前橋というように、場所を分けて撮影し、架空の“市”が出来上がりました。さりげない場所が多いのも、群馬の魅力ですし、ロケーションとしては最高の場所です。

 

横山さん 

いくつかの場所で撮影していても、統一感がありましたよね、映像として。いつもは撮影現場には1回くらい差し入れを持ってお邪魔するのですが、今回は5回も足を運びました。手作り感があるし、伊参の映画祭で知り合ったことがきっかけでもあったし、群馬でオールロケをしているということもあり、客人というよりは当事者感覚で見に行きました。監督には恐れ多くて声をかけられなかったですが(笑)

 

篠原監督 

横山さんがいらっしゃっているのは気づいてましたが、「どういう風に思われたかな?」とか思うと、なかなか声はかけられず……。

 

横山さん 

特に気にしてるふうはなかったですよ?(笑)

 

篠原監督 

目線で気にしてる感は出してました(笑)。ラストのシーンは撮影最終日に撮ったのですが、そこで「すごく良かったですね」と声をかけてくださり、ホッとしたのを覚えています。

 

横山さん 

「このシーンに繋がっていくのか」と納得するのと同時に「いい映画になるだろうな」と期待が膨らみましたね。

 

篠原監督 本当は、あのシーンは天気が悪いことを想定していました。でも撮影当日はすごくお天気がよくて、なんて気持ちいいところなんだろうって。メインカットの撮影が終わったら、あとは自然にまかせて撮ろうという気持ちになりました。

 

横山さん 

やはり、映画と小説は作り方が全然違いますね。私なんかいつもこもってひたすら書くだけ。部屋から出ない日が続き、閉塞感の中で生きているので、映画の撮影現場ではあんなに大勢の方が作業をしているのかとわかって、とても新鮮でした。

 

—— 美しい丘のシーンは、大きなスクリーンでまた観たいと思います。ありがとうございました!

 

<プロフィール> 篠原哲雄/映画監督 

1962年2月9日生まれ。東京都出身。明治大学法学部卒。その後、助監督として森田芳光、金子修介、根岸吉太郎監督作品などに就く傍ら、自主制作も開始。1989年に8ミリ『RUNNING HIGH』がPFF89特別賞を受賞。1993年に16ミリ『草の上の仕事』が神戸国際インディペンデント映画祭でグランプリ受賞。国内外の映画祭を経て劇場公開となる。山崎まさよしが主演した初長編『月とキャベツ』(96)がヒット。その後、『洗濯機は俺にまかせろ』(99)、『はつ恋』(00)、『命』『木曜組曲』(ともに02)、『昭和歌謡大全集』(03)、『深呼吸の必要』『天国の本屋~恋火』(ともに04)、『地下鉄(メトロ)に乗って』(06)など多彩な作品を手がける。近年の監督作品に野村萬斎主演の『花戦さ』(17)、いくえみ綾原作の『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』(18)、文音&草笛光子が主演した『ばぁちゃんロード』(19)など。『月とキャベツ』のスタッフが再結集して制作した『君から目が離せない Eyes On You』(19)では、山崎まさよしが主題歌を提供した。

 

<プロフィール>横山秀夫/作家 

1957年1月17日生まれ。東京都出身。大学卒業後、上毛新聞社で12年間記者として勤務。1991年『ルパンの消息』でサントリーミステリー大賞佳作を受賞し、新聞社を退社。その後、フリーライターなどを経て、98年の『陰の季節』で小説家デビュー。02年に発表された『半落ち』や、『クライマーズ・ハイ』(02)、英国推理作家協会の翻訳部門の最終候補作にもなった『64(ロクヨン)』(12)は、異なった俳優を主演に据えて映画版とドラマ版が制作され、それぞれ高い評価を受けた。ほか、『出口のない海』(96)が映画化、『顔』(02)や『震度0』、『ルパンの消息』(ともに05)などがドラマ化されたほか、『陰の季節』シリーズや『第三の時効』シリーズ(ともにTBS系)、『臨場』シリーズ(テレビ朝日系/12年には映画化)など、ドラマでもシリーズ化され愛されている作品が多数。

 

>>>『山崎まさよしさんが名曲の数々を生演奏した完成披露試写会レポート』はこちらから…

 

取材・文/タナカシノブ