今年6月、生理用品の製品開発・販売を手がけるユニ・チャームで、生理にまつわる意識を改革するためのプロジェクト「#NoBagForMe」が立ち上がりました。

 

女性特有の悩みに焦点を当て、生理についてもっと気軽に話し合える社会を作り、多様な生理用品の種類や機能を知ることで、女性がより快適な生活を送ることができるように、という願いが込められたこのプロジェクトを取材しました。

女性特有の悩みに焦点を当てた新規プロジェクト「#NoBagForMe」

生理用品のネガティブな印象を払拭するデザインを求めて

 

ナプキンやタンポン、月経カップなど、さまざまな種類があり、快適性、機能性が日々向上している生理用品ですが、商品ごとの特徴やメリット、快適さをよく知らず「いつもの」生理用品を長年使い続けているという女性が多いそう。

 

オーガニックコットンを使用したシリーズは、生理用品の快適性を追求した「#NoBagForMe」の先駆け

 

日本人のタンポン利用率は約3割と低い

 

国内で唯一タンポンの商品開発・販売を行うユニ・チャームですが、日本のタンポンの使用率はわずか3割程度。欧米では約7割の女性がタンポンを使用しているのに対して、使用率の低さが目立ちます。 タンポンを使ったことがある人は「動いてもモレる不安がなく快適」など、満足度も高く、リピーターも多い一方で、「使い方がわからない」「使うのが怖い」というネガティブな意見も多い現状。

 

ナプキン以外のバリエーションを知ってもらいたい

 

「日本では女性同士でも生理用品を話題にあげることが少なく、もっとオープンに、もっと気軽に生理ケアに関する話をしてもらい、知識を共有することが『女性がより快適に過ごす』ことにつながるのではないかと考え、そのための仕組みを作りたいと思っていました」とプロジェクトに携わるの広報IR室のHさんは話します。

 

SNSきっかけに新プロジェクトが立ち上がった

 

課題認識を深める中、ランジェリーブランドなどを経営しているハヤカワ五味さんから、SNSで「生理用品の開発をしませんか」という呼びかけをキャッチし、プロジェクトが本格始動。 その後、元HKT48でモテクリエイターのゆうこすこと菅本裕子さん、ラッパーのあっこゴリラさん、編集者の塩谷舞さん、漫画家の瀧波ユカリさんがメンバーとして集まりました。

なぜ生理用品は紙袋に包まれるのか


「なぜ生理用品を購入するときに紙袋で包まれるのか」という疑問から、多くの女性の潜在意識に根付く「生理についての話題は恥ずかしい」「生理用品を買うという行為を隠したい」という認識を変えていこうということに。

 

「もっと生理用品や生理ケアについて、気軽に話して行こうよ!」という気持ちを込めてプロジェクト名を「#NoBagForMe」と名付けたそうです。

 

「その最初のアプローチとして、生理用品の中でも使用率の低いタンポンのパッケージデザインの開発が行われました。『生理用品らしくない、これまでにないデザイン』を追求し、約100案の中から3案までに絞り、TwitterとInstagramを活用して一般ユーザーに投票してもらいました」

 

商品開発にSNSを使った試みも初めてのことで、どんな反応が返ってくるかとても緊張した、というHさんでしたが、たくさんの反応と声に、改めてユーザーの関心の高さを目の当たりにしたそうです。

 

投票数1位を獲得した「CAT」デザイン

 

もっとも投票数の多かったのは、「猫」のイラストが入ったデザイン。水色、若草色、すみれ色の優しい3色展開で、パッと見た感じでは「生理用品」というより、おしゃれで可愛らしいお菓子のパッケージのよう。女性はもちろん、パートナーの男性でも手に取りやすいデザインです。

 

僅差で2位の「SKY」デザインも採用が決まった

 

僅差で2位についた空色のグラデーションカラーが美しいデザイン案も、社内協議の末、ナプキンとパンティライナーの新デザインとして採用されることに。

 

新デザインの商品は、今年の12月に発売予定。プロジェクトメンバーは、「新しいパッケージデザインをきっかけに、生理用品を選ぶことの楽しさと重要性に目を向けてもらえたら」と、今後に期待を寄せます。

 

さらに「『生理の話題は恥ずかしい』という意識の払拭と、『男性の生理への理解度』を高めるため、男女分断の初経教育にも目を向けていきたい」とHさんは話してくれました。

 

ユニ・チャーム社内の様子。さまざまな種類のデスクがあるオープンな雰囲気

 

ユニ・チャームではこのような生理用品の開発以外にも、「働く女性を応援する」取り組みの一環として、保育園向けの「紙おむつ定額制サービス」を今年7月からスタート。

 

保育園へ持参する紙おむつへの記名や、荷物としてかさばる紙おむつの持参という、育児における負担を軽減した新サービスで、スタートから約2カ月経った今、広告・宣伝を大きく出していないにも関わらず、23都道府県約200施設での導入が始まっているそうです。

 

女性の「こんなの欲しかった」という商品やサービスを提供してくれる、ユニ・チャームの今後の展開も楽しみです。

 

取材・文/佐藤有香 撮影/緒方佳子