育児も介護も、家族を支えながら働ける環境を
(前回の記事「熊谷市長『短時間の有給制度が男性の育児を後押しする』」では)市長は男性が継続的に子育てに関わるが重要だと指摘していましたが、一方で男性の育休取得にも力を入れています。きっかけはなんだったのでしょうか?
熊谷市長
いくら「男性も子育てにしっかりと関わるべきだ」と言っても、組織風土が変わるのには時間がかかります。でも、意識が変わるまで20年も待つことはできない。まずは制度で動かしていこうと考えました。
育休というのはしっかりした制度なので、数値で変化を見せていくことで職員の意識も変わっていくのではないかと。「取らない場合は理由を申告する」という取得前提の運用にしたことで取得率が向上しました。
どのくらいの期間取得する人が多いのでしょうか。
また、取得者が増えたことで、職場での変化を感じる部分はありますか?
熊谷市長
1週間程度の人が多いですが、1年以上取った人もいました。
「取得するのが当たり前」という雰囲気になってきたことが一番大きな変化ですね。
これは、育児に関することだけではなく、例えば介護など他の理由で休みを取らなければならない人たちに関してもいい影響を与えていると思います。
育休に限らず、互いに家庭の事情を考慮し合う雰囲気が出来てきたということですか?
熊谷市長
そうですね。私は職員に「若い人だけが特権を得たわけじゃない」と説明しています。
例えば男女問わず、50代後半になって親の介護をするために早期退職するという人がいるんですが、それはもったいない。制度を使って休めばいいんですが、なかなかそうはいかない現実がありました。
しかし男性の育休取得が進んだことで、家庭で様々な事情を抱えている人に対し、職場が理解、配慮し、協力するという意識が広がりました。休む方も、負い目を感じずに済むようになってきた。広い意味でワーク・ライフ・バランスを大切にしながら働ける職場づくりが進んだと感じています。
自分が家族の中で何をすべきかを考えてほしい
逆に今、課題だと感じていることはありますか?
熊谷市長
事務職は順調に取得者が増えていますが、教職員や消防関係者の数値が上がらないという課題があります。
教職員に関しては少しずつ改善していますが、やはり消防が難しい。これは、もちろん仕事の関係で事務職よりも取りづらいという部分はありますが、組織風土の問題が大きいです。極めて男社会で、男性の育休取得や育児への関わりに対する認識が遅れている。それが数値にも表れていると思います。
風土や意識の問題もいまだ大きいんですね。
取得していない方の理由はどういったものが多いのでしょうか。
熊谷市長
収入が減るのが心配、職場に迷惑がかかる、配偶者が希望していない、というのが多いですね。
ただ、収入が減るというのは誤解ですし、職場に迷惑がかかるというのは、上司がリーダーシップを発揮してマネジメントすべき問題です。突然生まれてくる子はいませんから、職場内でしっかりと準備できるはずです。
また、「配偶者が希望しない」というのは、主体が自分じゃないですよね。子どもが生まれた今、自分が家族の中で何をすべきか考えてほしいと思います。「妻がいらないというから取らない」というのは、結局自分はお手伝い程度だと考えているんじゃないでしょうか。