日本には四季折々の美しい自然を楽しむ風習が多くあります。秋の風物詩として思い浮かぶのは「お月見」ではないでしょうか。秋の夜長に美しい月をめでるなんて日本人らしい素敵な風習ですね。そんな「お月見」をより楽しむための豆知識やアイデアをご紹介します。

 

1.2019年の「中秋の名月」はいつ?


お月見といえば「中秋の名月」を連想するのではないでしょうか。旧暦で、新月を「1日」とした際の15日目の夜を「十五夜」と言います。従って、十五夜は毎月やってきます。月の満ち欠けのサイクルから考えると、毎月十五夜前後がちょうど満月ということになりますが、中でも空気が澄んで月の明るさが際立つとされる、旧暦8月の十五夜にお月見を行う風習が今に伝えられています。旧暦では7月を「初秋」、8月を「仲秋」、9月を「晩秋」と呼んでいたことから、旧暦8月15日の月を「中秋の名月」と呼びます。


月の動きによって暦が決められる旧暦と、現在用いられている新暦(グレゴリオ暦)は完全にリンクしないため、旧暦の8月15日を新暦に直した際の日程は、年ごとに変動します。気になる2019年の中秋の名月ですが、今年は9月13日の金曜日となっています。

 

2.「中秋の名月」の歴史


お月見の歴史は古く、中でも「中秋の名月」は中国の唐時代の「中秋節」という観月宴を由来としていると考えられています。平安時代の遣唐使がこの風習を伝えたことで、日本では延喜9年(909年)に醍醐天皇が開いた「月見の宴」の記録が最古のお月見の記録とされています。その後、室町時代以降にお月見の風習が庶民まで浸透し、江戸時代にはススキや月見団子を供えて月を鑑賞するといった、現在のようなスタイルになったと言われています。

 

 

3.「十三夜のお月見」とは?


「十三夜(じゅうさんや)のお月見」という言葉を耳にしたことがあるのでは。中国から伝来したと考えられる「中秋の名月」に倣い、日本独自の風習として始まったとされています。秋の収穫祭を兼ねて行われるようになったそうです。


「十三夜の月見」は、旧暦の9月13日(新暦では10月中旬頃)に行われます。「中秋の名月に月見をしたら、十三夜の月見も同じ場所で月見をしないと『片月見』となってしまうため、縁起が悪い」とされている地域もあるそうです。ちなみに2019年の十三夜は、10月11日ということですので、中秋の名月と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

4.お月見のお供え物や供花はどんなものがよい?


お月見は、単に月を眺めるだけでなく、農作物の豊穣を神様に感謝する意味も込められているとされています。そのため、その年に採れた作物やお団子を供え物とすることが慣例となっています。

 

お供え物には、その時期に収穫されたばかりの農産物や果物を備えます。また、満月になぞらえて里芋や果物、月見団子など、丸い形のものが良いとされています。更に、「秋の七草」の萩(ハギ)、桔梗(キキョウ)、葛(クズ)、撫子(ナデシコ)、尾花(オバナ)、女郎花(オミナエシ)、藤袴(フジバカマ)を、ススキと共に飾るのが風流とされています。月見団子は地域によって多少違いがありますが、米粉や上新粉を小さく丸めて団子状にしたものを、皿や盆の上に、下から順に9個、4個、2個と積み上げて飾るのが一般的とされています。また、ススキを飾る理由については、諸説ありますが、ススキの形が稲穂と似ているためとか、魔よけの意味もあるそうです。

 

5.現代風アレンジでお月見を楽しむのもステキ


お月見のお供え物や供花には、上記のような伝統的な形式や意味が込められていますが、必ずしもこれらにとらわれる必要はありません。現代風にアレンジしたり、自分流のお月見を楽しむのもステキです。

 

例えば、お花についてですが、生け花のような形にしなくても、洋風のフラワーアレンジメントに仕上げることによって、現代風のリビングにもスッキリなじんでとてもオシャレです。秋の七草の他に、黄色のピンポンマムやマリーゴールドなど、丸く明るい色の花を満月に見立てて選ぶと、とても華やかです。「自分でアレンジするのはちょっと苦手」という方も、この時期は「お月見」をテーマとした完成型のアレンジメントもたくさん売られています。ネットショッピングでもいろいろ出ているので、チェックしてイメージをふくらませてみては。

 

お供え物についても、最近ではお月見の時期に合わせて、季節限定のかわいらしいスイーツなどが種類豊富に販売されています。「月といえばウサギ」ということで、ウサギをモチーフにしたスイーツなど、見ているだけで癒されるかわいいものばかりです。和菓子に限らず、マカロンやロールケーキなどの洋菓子も多いので、「和菓子が苦手」という方も楽しめます。中秋の名月をめでながら、美味しいスイーツを食べるというのも楽しい過ごし方と言えそうです。


「お月見」といっても、特別に気負う必要もなければ、形式にとらわれる必要もありません。自分なりのスタイルで美しい月を眺めて過ごすのはとても趣がありますね。大切なのは、忙しい毎日の中に「月の美しさをめでる」という心のゆとりを持つことではないでしょうか。今年の中秋の名月には、部屋の明かりを少し落として、月明かりを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

文/小野寺香織