「4組に1組が再婚」と耳にし、昭和より再婚しやすい社会になったと信じていませんか? しかし社会学者の筒井淳也教授は「それは統計データの読み間違え」だと指摘。実態は日本全体で非再婚化が進み、特に女性の再婚は昭和より難しくなっているといいます。データに潜む数字のマジックと、知られざる再婚のリアルに迫ります。

「再婚率が増えている」データには盲点が

── 国の調査(※1)によると、再婚の割合は1970年代から徐々に上がり、ここ20年ほどは高止まりしています。今や結婚するカップルの4組に1組において、どちらか一方が再婚者です。昭和よりも再婚しやすい社会になっているわけですが、その背景をどのようにお考えでしょうか。

 

カップルのイメージ写真
「結婚するカップルの4組に1組において、どちらか一方が再婚者」と言われるが、この数字にはあるマジックが潜んでいるという

筒井さん:うーん、参ったな…。メディアの方々はよく国のデータをもとに「再婚が増えている」前提で取材にいらっしゃるのですが、じつはこの前提そのものが、専門家の間では有名な「勘違い」なんです。データを分析すると、むしろ「再婚しなくなってきている」ことがわかっています。

 

── えっ、そうなんですか!? 再婚率の数字は、明らかに右肩上がりになっていますが…?

 

筒井さん:それは数字のマジックです。確かにグラフにしてみると(※2)右肩上がりに見えるかもしれませんが、国の統計が示しているのは、あくまでもその年に結婚した人のうちの再婚者の「割合」です。死別や離別をした人がどのくらい再婚したかを示す、割合ではないんですよ。

 

国のいう再婚率が上がっているようにみえるのは、長い目で見ると再婚の件数は大きくは減っていない一方で、初婚カップルの数が減り続けているから。それで同じ時期に結婚したカップルのうち、再婚カップルの「割合」が大きくなってしまっているだけなのです。「再婚の件数」があまり減っていないのは、かつて今よりも多くの結婚、そして離婚があったため、再婚の可能性のある離別・死別経験者そのものが多くいるからです。

 

── 再婚率は、初婚カップルをまじえた婚姻数から計算するのではなく、パートナーと別れた人を分母として計算しなくてはならないわけですね。

 

筒井さん:社会学者の余田翔平さんの研究(※3)では、1940~99年に離婚・死別した人を調査したところ、結婚した時期が新しいグループほど再婚する確率が減っていて、日本全体で非再婚化が進んでいることが示されています。

 

そしてこの調査では男性より「女性が再婚しにくい」こと、「男性については、学歴によって再婚のしやすさに差があり、その差が広がっていること」が示されています。「誰もが気軽に再婚できる時代」になったわけではなく、むしろその逆なのです。

『サザエさん』の世界には戻らない?

── 再婚しにくくなっている理由について、筒井さんはどうお考えですか?

 

筒井さん:一番は価値観の変化でしょう。昔は「結婚しないと一人前ではない」「家庭を築かない人はおかしい」という強いプレッシャーが社会全体にありました。相手に不満があっても「結婚できるなら」と目をつぶって入籍していたわけです。とくに女性は稼ぐ力が弱かったため、生活のために結婚・再婚せざるを得ないケースが多かったでしょうね。

 

── それがムリに結婚しなくても生きていける社会に徐々になってきたと。

 

筒井さん:「男は会社、女は家事」という『サザエさん』や『クレヨンしんちゃん』的な夫婦における性別分業が崩れ、女性も稼ぐようになりました。それにより「自分が幸せになれると思えば結婚・再婚するけれど、満足のいかない相手ならしなくていい」という判断ができるようになったのです。初婚も再婚も、慎重に相手を吟味するようになっています。だから、再婚する人の割合(確率)は下がり、経済的に不安定な立場の男性ほど再婚しにくくなっているのでしょう。

 

──「選べる」ことは「選ばれる」ことでもあり、むしろ婚活はシビアになるということですね。先ほど紹介された研究では、女性の方が男性より再婚する確率が低い状態が続いていることも示されていますが、それはなぜですか。

 

筒井さん:結婚相手の条件として、女性に対しては若さや出産を求める傾向があまり変わっていないからでしょうね。厳しい現実ですが、年齢の高い女性や子連れ女性ほど、再婚する確率は下がります。

子どもに会えないと「養育費負担」を渋る夫も

── 今すぐ離婚や再婚を考えているわけでなくても、人生には何があるかわかりません。結婚生活に際して、女性が心にとどめておくべきことは何でしょう。

 

筒井さん:夫と何事も徹底的に話し合う習慣をつけておくことです。察しと思いやりを期待してはいけません。夫婦のどちらかに古い性別分業意識が残っていれば、共働きであっても女性側が家事や育児を多く負担することになってしまいます。その状態で離婚となると、女性側が子どもを引き取り、男性側は「子どもに会えないなら」とに養育費負担を渋って、母子が困窮する…といった事態になりかねません。

 

日ごろから家事や育児、生活費について話し合って分担する。その習慣をつけておけば、離婚のときも諸条件を話し合えます。海外では、別れた後も母親側と父親側がそれぞれ子育てを担う「共同親権」の考え方が普及している国もあり、なかには誰が主に養育し、面会交流はどのように行い、養育費のうちどの費用をどう分担するかまで取り決めてからでないと離婚できない国もあります。日本でも2026年4月から離婚後の共同親権が選べるようになりましたが、協議離婚は届出だけで成立し、養育費や親子交流の取り決めは離婚の要件ではありません。そのため、あとになってもめ事が起きがちなのです。

 

── 幸せな再婚をするために必要なことは何でしょうか。

 

筒井さん:話し合う力をつけるほか、女性も稼ぐ力があったほうがいいでしょうね。離婚後、「誰かと一緒にならないと経済的に立ち行かない」状態で、相手の性格などに目をつむって再婚することになると、ミスマッチが起きても離れられない。そうなると子どももつらい思いをします。

 

ただ、実際問題としてはシングルマザーがフルに働くのは困難なことが多い。シングルマザーへの経済的な保障や雇用機会を確保するような制度を、国には充実させてほしいところです。

 

取材・文:鷺島鈴香 グラフ提供:筒井淳也

(※1)厚生労働省「人口動態統計」
(※2)厚生労働省「人口動態統計」(確定数)婚姻 第9-5表「夫妻の初婚-再婚の組合せ別にみた年次別婚姻件数及び百分率」より筒井淳也氏が作成
(※3)余田翔平『再婚からみるライフコースの変容』(2014年)