「投稿した瞬間はスマホを伏せました。どんな反応がくるのかと怖くて、いったん見ないことにしたんです」。42歳の誕生日に年齢の公表を決めたコスプレイヤーのはるさん(48)。世間の批判を恐れながらも決断した背景には、年齢を節目に趣味を引退していく周囲へのもどかしい気持ちがありました。
「コスプレは10代まで」と無意識の思い込みが

── まるでファンタジーの世界がそのまま現実になったような美しいコスプレで人気を博しているはるさん。現在48歳とはあまりに驚きです。はるさんが年齢を公表したのは42歳のときだったそうですが、それまでは年齢を明かすことにためらいが?
はるさん:「コスプレは若いうちにするもの」という思い込みが、自分にもあったのかもしれませんね。私が初めてコスプレをしたときは高校生で、大学受験をきっかけに一度やめたんです。受験を理由にしつつも、うっすらと「コスプレは10代まで」と思っていた気がします。
20代後半に、同人誌の即売会に行き、再びサークル参加したことをきっかけにコスプレを再開したのですが、やはり周囲は年下ばかり。たまに、好きな作品の話から「もしかして…」と同年代だとわかると、すごく嬉しかったのを覚えています。
── 家族や身近な人から、年齢を理由にコスプレをやめるよう言われたことはあったのですか?
はるさん:それは全然ないんです。親も、衣装を作っていたら「新選組やるの?」なんて声をかけるくらい。「だんだら模様を作ってた訳ではないのに、なんでわかったんだろう」と思いましたけど(笑)。親しい友達も「イベントなんだね」という感じで、ごく普通に受け止めてくれていました。
それでも、スタジオやイベントの申込書に年齢を書くときは、歳を重ねるにつれてコソコソしてしまって…。コスプレは、ただただ楽しくやりたい趣味なのに、どうしてこんなことを気にしているんだろうって。年齢を隠すこと自体が、だんだんわずらわしくなっていたんです。
── それでも、公表するのは怖かったのですね。
はるさん:当時、私の目に入る範囲では、40代と明かして活動する人はまだ少なくて。引かれるかもしれないという思いが過りました。
周りは優しくて、楽しい方々たちばかり。でも、基本的にみなさん年下です。年齢を知っても変わらずにいてくれるだろうと思いつつ、曖昧にしていたことをはっきりさせるのは怖くて。「年齢差があるからつき合いにくい」と思われたり、変に気をつかわせたりしないかな、と心配してしまったんですね。
42歳の誕生日、投稿してすぐスマホを伏せた
── その怖さを抱えながら、公表に踏み切ったのはなぜですか。
はるさん:自分が楽しく過ごすため、というのが一番です。それに、周りで「もうすぐ30歳だから、そろそろやめなきゃ」という方々もいて、もったいないと思っていたんですよ。
私は30代を迎えてから、どんどんコスプレが楽しくなっていました。時代の移り変わりとともに、仲間同士で写真を撮り合うところから、カメラマンさんと一緒に作品の世界観を作るようになったり、造形ができるようになったり。経験を重ねるほど、やれることが増えていったんです。
だから、年齢を区切りにやめようとする人を見ると、「これからもっと楽しくなる可能性もあるよ」と思っていたんですね。
── 年齢を公表したときのことを教えてください。
はるさん:SNSで「#年齢とコスプレ写真晒してびっくりした人がrtしてくれる」という、年齢を公表するハッシュタグを見つけて、「42歳の誕生日に、これをやろう」と決めたんです。期限を決めないと、ずるずる先延ばしにしてしまうと思ったので。ただ、投稿した瞬間はスマホを伏せました。どのような反応が来るのか怖くて、いったん見ないことにしたんです。
少し時間が経ってから見てみたら、想像通りまず相互フォロワーさんたちが驚いていました。その中に「勇気をもらった」といってくださる方々、「私も便乗して年齢をいってしまおう」と、同じタグで公表する方もいらして、どんどん自分の想像を超えた反応をいただきました
そこから更に知らないコスプレイヤーさんや、コスプレをしていない方々からも反応をいただいて。年齢について何かしら気にしているのは、自分だけではなかったんだなって。むしろ、私のほうが勇気をいただきました。
── 心配していたような反応や、関係の変化はありましたか。
はるさん:少なくとも、それで嫌な思いをした記憶は残っていないんです。自分が見ている範囲では、暴言をいわれたという認識はないですね。周りの方々との関わりも変わりませんでした。
そもそも私は、自分のことを好きでいてくれる方が好きです。もし年齢だけで引かれるなら、その人と付き合い続けなくてもいいかな、とも思っていて。自分の人生を楽しく過ごしたいから、一緒に楽しんでくれる方との関係を大切にしたいと考えているからこそ、この気持ちになれたような気がします。
「年齢を節目にやめる」選択肢があってもいいけど

── 年齢を公表した今も、コスプレへの意欲は変わらないのですね。
はるさん:ゲームやアニメなど、ずっと何かしらにハマっていて、今はスマホゲームとVTuberが大好きです。好きなものがあることが、日々のモチベーションになっていると思います。
コスプレは私にとって、作品やキャラクターへの愛情表現なんです。好きなキャラクターに近づきたいし、大好きだからこそ、失礼のないように表現したい。その気持ちはずっとありますね。
── その表現を楽しむことが、体を動かす習慣にもつながっていますか。
はるさん:あえて毎週コスプレの予定を入れているんです。私のなかでは、スポーツジムみたいなものなので(笑)。撮影で山に登ったり、海に行ったり、1日に1万5000歩くらい歩くこともあります。ポーズをとるために、普段しないような体のひねり方もしますし、撮影では結構体力を使うんですよ。
── キャラクターを表現するために、メイクも工夫されているのでしょうか。
はるさん:そうですね。コスプレにハマっていなかったら、メイクにはあまり興味がなかったと思います。写真は加工の力もありますけど、コスメを見に行ったり、動画で新しいメイクを知ったりして、表現方法を追求しています。
日々のケアでは、お風呂から上がったらすぐ保湿します。高いものではなくても、化粧水をたっぷり使っていますね。美容は私にとって、年齢を気にせずコスプレを全力で楽しむための準備のようなものです。
── 42歳での公表を経て、年齢とコスプレの関係を、今はどう捉えていますか。
はるさん:コスプレ活動をしていて、周囲に年齢を言うことへの悩みはなくなりました。今では、年齢のタグは「毎年恒例!!」くらいの気持ちです。表現方法も増えましたし、仲良くしてくださる友達もいて、ずっと楽しいと思っています。
年齢を節目にやめる、という選択があってもいいと思うんです。でも、やめなきゃいけないわけではない。趣味を楽しんでいて、続けたい気持ちがあるなら、年齢を理由にやめなくてもいいんですよね。
「もしかして、やめなくてもいいんじゃない?」。そんな選択肢がひとつ増えるだけで、気持ちが少し楽になるんじゃないかなと思います。
取材・文:イワイユウ 写真:はる