病気が発覚。真っ先に浮かんだ「仕事のこと」
── 子宮体がんの発症年齢は50〜60代がピークだそうです。現在、桃華さんは45歳でお若いのですが、子宮体がんだと告げられた際の心境を教えてください。
桃華さん:自分でも、あれだけの出血があるのは「何か理由があるのでは」と思っていたので、がんと診断されたショックよりも「やっぱりそうだったんだ」という気持ちが大きかったです。結果を受け止められたのは、子宮体がんの疑いがあると言われてから、自分のなかである程度、覚悟をしていたからだと思います。
その後は「仕事はどうしよう」とばかり考えていました。シングルマザーで子育てをしてきて、自分でどうにかするという習慣が染みついていて。入院費や今後の治療費にお金がかかるだろうと思うと、仕事のことが真っ先に頭に浮かびました。20代で起業して、アパレルなどの経営をしてきたので、告知を受けた後も自分より周りへの影響が心配で。このときもまだ自分のことを大切にできていなかったように思います。
── 入院中もSNSを更新されるなど、積極的に発信を続けてきました。これまで手術のために2度の入院をしてきたそうですが、それぞれどんな手術をされたのでしょうか。
桃華さん:最初の入院は1泊2日で、細胞を調べるために分厚くなった子宮内膜を掻き出す手術で、流産した方がされるものと同じ手法だと説明を受けました。
2回目の入院は、子宮と卵巣の摘出手術でした。入院期間は2週間程度の予定でしたが、術後の回復が早く8日で退院できました。手術の翌日から、傷口が癒着しないようにがんばって病院内を歩いたのがよかったようです。出産で帝王切開をされた方も同じことを言われるみたいですが、点滴を持ちながら病院の同じフロアを毎日10周、歩きました。
病気公表で「ここまで違う反応」
── お腹を20センチも開ける手術の翌日から歩く…。かなり痛みもあったと思いますが、入院中にはどんなことを考えていましたか。
桃華さん:最初のうちは点滴の麻酔をしていて、たしかに麻酔が切れると痛いのですが、出産の痛みの経験を考えたら、耐えられました。母は強しですね。その後は飲み薬の痛み止めをいただき、痛みはあるものの、日に日によくなっていくのがわかります。
入院中はお見舞いに家族や友人が来てくれていて、改めて人間関係について考え直していました。本当に人によって反応がさまざまでびっくりしたんです。
最近はほとんど連絡を取っていなかった友人がニュースを見て泣きながらお見舞いに来て、そのあと毎日ように足を運んでくれたり、毎日のように連絡をしていた人からの連絡がパタッと来なくなったり。仕事関係の方にがんで入院することを伝えたら、「頑張ってください」という言葉だけが返って来るなど、「人の反応って、こんなにはっきり違うものなの?」と思いましたね。
── コロナ禍で人と直接会う機会が減った際に、人間関係を見直した方が多かったようですが、状況が似ていますね。
桃華さん:今まで見えていなかったことが見えて、スッキリした気分です。これまでの私はいろんなところに気をつかって、無理をして人づき合いをして生きてきたタイプだったのですが、これからは家族や友人など、本当に大切にしたい人を大事にしていこうと思えました。これもいい機会になったと感じています。
── 手術で取り出した子宮と卵巣を検査した結果、がんが血液に入り込んでいるという話をされたと伺っています。今後の治療はどうなるのでしょうか。
桃華さん:副作用が怖くて抗がん剤治療はしたくないと思っていたんですが、息子とよく話し合って抗がん剤治療をすることに決めました。人は、いつ何があるかわかりません。いつも周りが優先で、自分のことは後回し。これまで自分を大切にしてこなかったぶん、これからはもっと自分の心に素直に生きようと思っています。
── お話を伺っていると、病気の判明後も、手術や治療に迷いなく前向きに向き合えている強さを感じます。
桃華さん:もともとポジティブですが、病気をしてさらにそれが加速したような気がしています。私には「あのときこうしておけばよかった」という思いはあっても、決して後悔はありません。そのとき、そのときでベストな決断をして全力で駆け抜けてきたので、「しなかったことへの後悔」はまったくないんです。「明日、何があっても悔いはない」という気持ちで毎日過ごしてきました。
病を通じて感じた「人生は案外短いかも」
── 病に向き合いながら「これまでの人生に後悔はない」と言い切れるのがかっこよすぎます。そこまで桃華さんが前向きでいられる理由はなんですか。
桃華さん:何を悔やんでも、過去を振り返っても今は変えられません。病気になってこれまでの人生を振り返ってみたのですが、すべて自分で納得して向き合ってきたので、病気をした今でも「つらい」という気持ちはまったくなく、毎日楽しいんです。
ただ、今回、がんになって思うことは「人生は案外短いのかもしれない」ということです。22歳の息子はひとり暮らしをして自立しているので安心しているのですが、ふと「まだ守ってあげなきゃ」という部分が見えたとき「もっと長く生きなきゃ」と思いますね。息子のためにも、応援してくださる方のためにも、抗がん剤治療を終えて、また元気な姿を見せられるよう、がんばります。
取材・文:内橋明日香 写真:桃華絵里