夜9時まで塾に通う暮らしに疑問があった──。家族で岩手へ移住した天津木村さん。大自然の中で見せた娘たちの笑顔と、中3・中1の思春期を迎えた今も毎朝欠かさない「ひと笑い」の習慣。都会を離れて見つけた、子どもと笑い合える子育てのヒントを伺いました。

「そんな覚悟でどうする!」ヒロミからもらった喝

天津木村
詩吟ネタの人気急落後は、ヒロミさんの運転手も勤めていた

── 2021年から岩手朝日テレビの情報バラエティ番組『Go!Go!いわて』のMCを務めていらっしゃいます。詩吟ネタでブレイクしてから10年以上の月日を経ての番組起用。きっかけはなんだったのですか?

 

木村さん:これは自分でも不思議なんですよね。岩手は本当に縁もゆかりもないところだったんですが、岩手朝日テレビのプロデューサーさんから急に連絡が来て、「朝の生放送番組のMCをやってみませんか?」と。その方とはちょっとした知り合い程度の間柄だったので、「朝の生放送…僕、あの詩吟のネタですよ?」と返したら、なぜか「木村さんがMCをやっている姿が見えるんです」と言ってくださって。

 

そのときはロケバスの運転手を辞め、ヒロミさんの運転手になっていたんです。その話をヒロミさんに相談したら「土曜朝の生放送番組のMCなんて仕事、そんなありがたい話はないぞ」と。それまで僕は前乗りも含めて金曜と土曜に岩手に行けばいいや、と考えていたんですけど、ヒロミさんは「そんな覚悟でどうする!岩手の人たちと同じ空気を吸い、同じ景色を見て、同じ食べものを食べてこそ、ようやくお前のことを好きになってくれるんじゃないか」と言ってくださって。その言葉に後押しされて、岩手に移住することを決めました。

 

── ヒロミさんの言葉が移住する決め手になったと。

 

木村さん:完全にそうですね。そのときにヒロミさんから言われた言葉でもうひとつ印象に残っているのは、「チャンスが来るのを待ってます、というヤツがいるけど、それは違う」と。「チャンスというのは身の回りにたくさん転がっていて、それに気づいて拾いあげるかどうかなんだよ」と言われたんですね。僕はそれまでそんな考え方をしたことがなくて。改めて「自分にとってのチャンス」を考えた結果、岩手に行くことを決めたんです。それをヒロミさんに伝えたら「岩手のスターになってこい!」と言ってくださって、僕もそうなることがヒロミさんへの恩返しになるんじゃないかと思いました。

 

── 最初、岩手は木村さんだけで単身赴任する予定だったそうですね。

 

木村さん:そのときは娘たちが小学生やったんです。「転校するのも大変かな」と思って、「俺はここが勝負やと思うから、岩手に単身赴任する」と妻に宣言しました。そうしたら妻が「それは違うんじゃない」と。「一緒に暮らしてこそ家族だと思うから、私たちも一緒に行くよ」と言ってくれて、家族みんなで岩手に移住することになりました。

 

── 懸念されていたお嬢さんたちの学校問題は大丈夫だったのでしょうか?

 

木村さん:娘たちは生まれも育ちも東京です。まったく違う環境に適応できるのか心配でした。実際、東京の友達と離れることを寂しがってはいましたが、岩手に行くことにはワクワクしていたようです。もちろん戸惑いもあったかもしれませんが、転校初日から友達ができたらしく、学校から帰ってくるなり「今からAちゃんと遊びに行ってくる!」と家を飛び出していって。その姿を見て「なんとかなるもんやな」と思いました。

 

── 転校初日からお友達ができるというのは、娘さんたちも木村さんの器用さとコミュニケーション能力を引き継がれているのかもしれませんね。

 

木村さん:どうなんでしょうね(笑)。でも、親としては、本当にこっちに引っ越してきてよかったなと思っています。というのも、移住したときは上の子が小学4年生、下の子が小学2年生で、東京だと中学受験に向けて塾通いを始める子が多いんですね。でも、自分はそれがなんかイヤだったんです。夜の9時くらいまで塾で勉強して、そこから電車で帰ってくるみたいな。違う暮らしを選択するためにも、岩手に引っ越してよかったなと思います。

 

もちろん、岩手でも小学生から塾に通っている子もいますが、東京ほどは「お受験」にシビアではありません。娘が学校から帰ってきて「今日、みんなで松ぼっくりで遊んで、とても楽しかった!」なんて話をしているのを見ると、「この環境、めっちゃいいやん」と思います(笑)。

思春期の娘に…みずから課した毎朝の「ひと笑い」

── 今、娘さんたちは中学生になりました。そろそろ思春期が始まる年齢だと思いますが、その予兆はありますか?

 

木村さん:上の子が中学3年生で、下の子が中学1年生なので、難しいところですよね。「これは反抗期なんかな?」と思う瞬間はあります。だからこそ僕は、前日に夜深くまで飲んでいても、学校がある平日は娘たちと必ず一緒に朝ごはんを食べ、そこで「ひと笑い」させるというのを決めているんですね。

 

──「ひと笑い」?

 

木村さん:仕事も同じだと思いますが、誰だって学校に行くのが憂鬱な日ってあるじゃないですか。今日が娘たちにとってどんな日かはわからないですが、「1日のスタートを笑って始められるように」と、自分に課しているんです。どう頑張っても無理なときは、変顔とか変なポーズをしてでも無理やり笑かしにかかります。もう必死ですね。

 

でも、ずっと続けたおかげか、思春期に差し掛かった今も、娘たちとはコミュニケーションがしっかり取れていますし、ふたりとも穏やかに育ってくれているなと思います。

 

── ちなみに、今朝の「ひと笑い」のネタは?

 

木村さん:僕がヨーグルトに砂糖を入れるという話をしているときに、ヨーグルトのことを「冷蔵庫」と言ってしまって。単なる言い間違えなんですけど、「ヨーグルトと冷蔵庫って、語感が似てるよな」みたいな感じで笑いにもっていきました。今、しゃべったら何がおもろいんか、まったくわからんと思いますけど、娘たちとはそれで盛り上がりました(笑)。

 

── お嬢さんたちから「さすが芸人の娘!」みたいな鋭いツッコミが入ることはあるのでしょうか?

 

木村さん:めちゃくちゃツッコまれますね(笑)。「こんな角度からツッコんでくるんや!」と思うときもたまにあります。