世間の批判に「現状を知ってほしい」
── 『24時間テレビ』でご家族の露出が増え、ふうかさんが普通学級で授業を受けることに対し、教員の負担や、酸素のサポートが必要なふうかさん自身の体調面の心配など、ネット上でさまざまな意見が交わされました。現在の環境を選んだ理由について教えていただけますか。
高野さん:ふうかは現在、学校長の裁量権で、特別支援学級に在籍しながら、5年生の通常学級にフルで通っています。先生も理解があり、横にサポーター・支援員の方が常についてくださっていますし、体調面についてはふうか自身が自分の言葉で伝えることができます。医療的ケア児が普通学級で授業を受けることに対して、「障がいがあるなら特別支援学校にいったらいいのではないか」という声がありましたが、なぜふうかが特別支援学級が設置されている公立小学校に通っているのか、きちんと日本の制度と現状を知っていただきたいと思っています。
特別支援学校とはどのような学校で、特別支援学級に在籍する子と特性がどう違うのかわかる方はどれくらいいらっしゃるのでしょう。肢体不自由のある子どもたちは、知的障害を併せ持つ場合もあり、学習の進度や必要な支援は一人ひとり異なります。特別支援学級では、一人ひとりの特性に応じたきめ細かな指導を受けられるという大きなメリットがあります。一方で、同年代の友達と日常的に交流する機会が限られる場合もあります。私が大切にしたかったのは、学力の向上だけではありません。同じ年代の友達と、その年頃ならではの何気ない会話を楽しみ、時には意見がぶつかったり、笑い合ったりしながら、人との関わり方を自然に学んでほしかったのです。
障がいの有無や学びの進度にかかわらず、多様な友達との関わりは、子どもたちの情緒や社会性を育む大切な機会になります。だからこそ、一人ひとりに必要な専門的支援を受けながら、同年代の友達と共に学び、共に成長できる環境を望みました。批判の声がある一方で、さまざまなバックグラウンドを持つ子どもたちが同じ教室で一緒に学ぶことへの肯定的な意見もあり、嬉しく思っていました。
インクルーシブ教育が必要なのは「私たち親世代」
── 高野さんから、ふうかさんが通っているのは肢体不自由のお子さんの受け入れ体制が整っている公立小学校で、そのうえ「お友達を作って楽しく学校生活を送っている」と聞いて、ネットで繰り広げられた「障がいがある子どもが普通学級で学ぶこと」の批判との大きなズレを感じました。
高野さん:このような批判が起きてしまう理由は、私たち親世代が分離教育で生きてきたからにほかならないと思っています。特別支援学級や特別支援学校の子どもたちと交流してきた経験がある方はどのくらいいるのでしょうか。その世代が親になっているのが現実で、インクルーシブ教育が本当に必要なのは私たち親世代だと思っています。
インクルーシブ教育とは耳当たりがよいものです。「共生社会」と聞いて、嫌に思う方はいないと思います。でも、みなさんにはこれは制度ではなく、障がいがある子どもも他の子どもと平等に教育を受ける権利があるという、人権の話だということを知ってほしいです。
── ご夫婦揃って社会福祉士の国家資格を取得したのも、しっかりとした情報を得るためだったそうですね。
高野さん:娘が生まれるまで福祉とのつながりがなかったので、正直、私たちも娘をどのように育てていったらいいのか、どんな制度を利用できるのか知りませんでした。僕はもともとポジティブなのですが、ただ「なんとかなる」と言っているだけでは説得力がないので、情報を集めるために社会福祉士の資格を取りました。情報は武器であるということは、マスコミの勤務経験からも実感していたことでした。
── TBSのアナウンサーから都議会議員に転身し活動しています。娘さんの難病がなければ政治家の道は歩んでいなかったのでしょうか。
高野さん:その質問、よく聞かれるのですが、娘がいなかったら政治家にはなっていなかったと思います。私自身、政治に関しては正直、諦めの気持ちがあった人間でした。娘が生まれて、子育てをしているうちにやはり制度面での不足などの壁にぶつかって、「やはりこれを根本から変えるには政治を変えるしかない」という思いから政治家になりました。障がい福祉で取り残されているみなさんの意見をしっかり受け止めて、反映させたいという思いで活動に取り組んでいます。
取材・文:内橋明日香 写真:高野貴裕