41歳で新人「周りから気をつかってもらって」
── 令和になって、上司からの圧力は減ったと感じる方は多いのですが、キャリアの多様化で、上司が年下になった経験がある方もいらっしゃると思います。桂三度さんは、41歳で落語家に転身し、落語の世界では遅いほうだと伺っています。年齢的なことで「仕事のやりにくさ」を感じたことはありますか。
三度さん:この世界は、高卒か、大学で落研(落語研究会)に入っていた方がそのあと弟子入りするのが主流で、同期は圧倒的に若いんです。漫才のように養成所がなく、師匠に弟子入りして勉強するのですが、寄せや演芸場では、師匠だけではなく他の先輩方のお着物も畳みます。入門が早い人が先輩で、これまでの経歴は関係ありません。
下積みの、前座修行中に楽屋の雑用係として掃除や師匠の身の回りのお世話をしていたときでした。私と同期の若い人で楽屋に入って、「師匠、お茶はあたたかいのと冷たいの、どちらがよろしいですか」と聞いたら、師匠は「お茶いらんねん」と。「そうですか、わかりました」と言って楽屋から出て、用事を済ませて楽屋に戻ってくると、師匠が若い雑用係に「お茶入れてくれ」と言っているのを聞いてしまって。「これは聞いたらあかんやつだ」と思い、とっさに隠れました。
「僕に気をつかって、いらんというてくれたんやな」と。やっぱり若い人のほうがものを頼みやすいですよね。周りのみなさんから気をつかってもらっているのを感じているのですが、みなさんいい方ばかりで、ありがとうございますという気持ちと、申し訳なさと両方ありますね。
「弟子を育てるゲーム」と思って今を生きる
── 40代から下積み生活がスタートし、これまでの経験やプライドが邪魔してしまうこともあったかと思います。大変なとき、メンタルをどう保ってきたんですか。
三度さん:41歳で新人から始めるのは正直しんどくて、参考になるかわからないんですけど、これはRPG(ロールプレイングゲーム)だと思うようにしました。桂三度という弟子を育てていくゲームをしていることにするんです。
たとえば師匠と1日ご一緒するとき、「今日ノーミスで師匠に怒られなかったらクリア」と設定します。ゲームではコツコツ、アイテムを集めていくと思うのですが、弟子を育てるゲームでは、師匠にお出しするお茶やお水やおしぼりがアイテムです。師匠があと30分後に何がほしいかを予測して用意していきます。ゲームだと思ったら楽しくがんばれるんですよ。
── 2018年に「NHK新人落語大賞」を受賞されました。順調に落語家としての道を歩まれているように見えますが、今後の目標を教えてください。
三度さん:いえ。落語家としてはまだまだで、覚悟はしていたものの、ほんまに難しいところに飛び込んできたと思ってます。生半可な覚悟では無理ですね。
すべてはいいテレビタレントになるためにやっていることで、今後の目標については「売れるしかない」に尽きます。人生100年時代と言われていますが、僕らは声が出なくなったらできないんで、80歳くらいまでですかね。まだまだがんばりますよ。
取材・文:内橋明日香 写真:桂三度