「デュエットしてもおじさんはモテへん」。令和のいま、ハラスメントに一石を投じる“ノーセクハラ曲”を作詞した、世界のナベアツとしてヒットした落語家の桂三度さん。41歳で弟子入りし年下の同期や先輩に囲まれた下積み時代、プライドを打ち消して心をラクにした「自分を育てるRPG思考」、職場の人間関係をサバイブする知恵とは。
令和にデュエットソング「なんで?」
── 今年3月、町あかりさんとのデュエットソング『愚痴が果てたら』で歌手デビューしました。デュエットソングは昭和が全盛期で、平成の時代にも歌われてきましたが、令和のいま、なぜデュエットソングなんでしょう。
三度さん:僕がシンガーソングライターの町あかりさんのファンで、それがご本人に伝わって、作詞のお話をいただきました。「新曲のデュエットソングってないから、やってみようか」というところから始まって。作曲を担当した町さんと、「デュエットソングだけど、恋愛につながるような方向性はやめよう」と擦り合わせてきました。「これなら絶対セクハラにならない」というデュエットソングがあってもいいのかなって。

── 作詞を担当された曲を拝聴しました。純粋に面白いのですが、歌詞の意味について聞いても大丈夫ですか(笑)。
三度さん:意味はないんです。聞いてもらったらわかると思うんですけど、アホなんですよ(笑)。『愚痴が果てたら』というタイトルにはわけがあって。飲みの席で、愚痴や人の悪口をずっと言う人がいますよね。そんな長々と話してないで、これを歌って頭の中を空っぽにしてほしい。今日の嫌なことは忘れて、また明日からがんばろうと思ってもらえたらいいなという願いを込めています。
昭和、平成でデュエットソングを歌ってきた方も楽しめる歌詞で、「ノーセクハラ」で楽しんでもらえると思います。実際、曲ができてから「本当にありがとうございます」とか「絶対覚えます。セクハラがいっさいないので助かります」って声が僕に届いてるんです。狙い通りの反響をいただけて嬉しいです。
この曲には絶対このふたりだと思い、MVには藤井隆さんと椿鬼奴さんに出てもらって、自分が撮影しました。ふたりともソバージュのウィッグをつけて、階段の踊り場で踊っています。
「デュエットしたってモテへんのにな」
── デュエットソングといえば恋愛ものをテーマにした曲が多いです。私自身も社会人になってから、自分が生まれるより前に誕生した曲を覚えた経験があります。
三度さん:職場の上司がデュエットソングを部下へのハラスメント目的で歌いたがっているという話を聞いたことがあって。たとえば、曲の歌詞の一部を、一緒に歌っている女性の名前に変えて歌うとか、歌詞に合ったタイミングで見つめ合うとかですね。カラオケがあるスナックで働いている女性も「デュエット歌うの嫌だ」と言ってる人が多いみたいなんですよ。
かつて、デュエットソングを歌っている際に、セクハラの光景が多かった時代がありました。名指しで「歌って」と言われた側は断りにくいでしょうし。おじさんだけが楽しくて他はしらっとしている空気って、やっぱり当時から違和感がありました。「いやいやデュエットしてもモテへんのにな」と思っていました。「むしろもっと紳士な対応をしていたほうがモテるんちゃうの」と。でもこれも仕事のうちだと思って我慢している人が多かったんでしょうね。
── 今ではハラスメントの認識がだいぶ広まってきていて、あからさまなハラスメントは減ってきている印象ですが、「接待カラオケ」という言葉があるように、仕事上の関係をよくするために取引先とカラオケに行く文化は今も存在しているようです。
三度さん:令和になって、若い世代が仕事の飲みの席に行きたがらないという話も聞くし、行ったとしても長々とは付き合いたくないでしょうね。それならこの曲をパッと歌って、そこで解散というのもいいんじゃないかなって。ぜひ歌ってほしいと思っています。デュエットソングではありますが、歌っているふたりだけではなく、そこにいる全員で歌って楽しんでくれたらいいですね。