全身の筋肉が徐々に動かなくなる進行性の難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)。2児の母であるはらだまさこさんは現在、周囲の手を借りながら生活しています。当初は戸惑いや葛藤もあったはらださんですが、日々の自問自答や共通の友人を介して知り合った車いす生活者の声から希望を見出します。

3文字打つのに3分。PC操作に挑戦する今

2018年、福岡にオーガニック喫茶店「SOUNDS FOOD SOUNDS GOOD」をオープンし、精力的に活動していたはらださんがALSと診断されたのは、2人目のお子さんを出産した2年後、2023年6月のことでした。

 

長女を出産してまもない2021年半ばごろから、左足がつるようになり、次第に足が思うように上がらず、つまづくことが増えていきました。当初は、出産による骨盤のゆがみだと思い、整骨院に通っていたといいます。

 

その後も症状は改善せず、医療機関でMRIや血液検査などを受けても原因はわかりませんでした。自分でも症状について調べるなかで「ALSかもしれない」という思いが強くなり、恐怖から病院へ行くことをためらった時期もあったそうです。

 

「『ALSかもしれない』という思いと、『どうか違っていてほしい』という思いがずっとせめぎ合っていました。何の病気か特定されないまま、足だけがどんどん動かなくなっていく。確定診断がつくまでが、一番つらい時期でした」

 

そして2023年6月、ALSと診断されました。ある程度の覚悟はしていたものの、病名を聞いた途端、涙が止まらなくなったそうです。その後も、絶望に打ちひしがれ、外に出ることが怖くなり、やる気も湧かず落ち込む日々。ところが、そんな時間をしばらく過ごしていたはらださんの気持ちに変化があらわれます。

 

「泣くこと、落ち込むこと、苦しむこと、ネガティブな自分にものすごく疲れてしまい、この時間がとても勿体ないなーと思い始めたら、少しずつ前を向けるようになりました。今でも落ち込む日はあるし、完全に受け入れられたわけではありません。でも、諦める必要はないと感じています」

 

「わたしがこの病気になったのには必ず理由があると思っている」と話すはらださん。

 

「その答えはまだわからないけど、今はそれを探す旅を楽しんでいます。まだまだ知らなかった世界がたくさんあってそれを知ること、何より自分の為にあれこれすることが楽しいんです」

 

はらだまさこ
体調のいい日は車いすで外出を楽しむはらださん

そうして病気と向き合う間にも症状は少しずつ進行していき、現在は、指先がわずかに動かせるかどうかの状態。ほとんど体を動かすことができません。

 

「今は、1日の半分ほどは自宅で横になって過ごしています。言葉を発することも難しくなってきたため、家族や友人との対話も『はい、いいえ』といった短い返答が中心です」

 

そんななか、この夏から取り組んでいるのが、パソコンを使った文字入力。わずかに動く指先を使って、手が不自由な人向けの機器でパソコン操作をしています。

 

3文字を入力するだけでも3分ほど。それでも、自分の思いを自分の言葉で伝えるための、大切な手段になっています。今回の取材でも、はらださんの友人である田中文さんがまとめた回答に、はらださん自身がパソコンで修正を加え、自分の思いを伝えてくれました。