「子どもは欲しくなかった」の言葉が引き金
── かなみさんから「やめて」と言われても、カメラを回し続けるのはなぜですか。
つばささん:そこが一番面白いからです。家でゴロゴロしたり悪態をついたりする、ふつうなら隠したくなるかなちゃんの素の姿こそ、うちのチャンネルの核なんです。やる気のある僕ではなく、やる気のないかなちゃんがメイン。作った夫婦像ではなく、見せたくない部分までさらけ出すから再生が回り、それが家族を食べさせていく仕事にもなっている。だから15時間カメラを回し続けることもあります。何か起きた瞬間を逃したくないんです。
かなみさん:私は家では仕事から離れて自分のペースでゆっくりしたい。撮られたくない姿まで撮られてコンテンツにされると、家にいても気が休まりません。仕事なら「8時間労働、1時間休憩」みたいに、生活と仕事の境界線をどこかでちゃんと引いてほしいんです。
── 撮影に対するかなみさんとの温度差について、つばささん自身の考え方に変化はありましたか。
つばささん:以前は「カメラ目線を合わせて」「食べるときは商品をきちんと見せて」と、僕と同じ熱量を求めていました。でも、視聴者さんとやり取りするなかで、みんなが見たいのは、僕の指示どおりに動くかなちゃんではないと気づいたんです。それでは、かなちゃんらしさを消してしまう。それからは、撮影のしかたについて細かく言わなくなりました。
── 日常のあらゆる場面をコンテンツにしたい夫と、家では仕事から離れて心を休めたい妻。カメラの外での生活にも、ズレは表れていったのでしょうか。
つばささん:僕は撮影や動画編集にかなりの時間を使っているので、その間の家事はかなちゃんに担ってほしいと思ってしまうんです。僕が逆の立場なら、家事をすべて終わらせてから休むのに、「なぜできないんだろう」とイライラする。こういうところが「昭和っぽい」と言われるのかもしれませんが、前職で11年間介護の仕事をしていたので、料理や洗濯、子どもの世話もひと通りできます。だから余計に細かいところまで気になって、「よその家はもう少しきれいにしている」と、姑みたいに口を出してしまうんです。
かなみさん:たしかに夫は家事も育児もできるし、実際によくやってくれます。だからこそ、私にも自分と同じようにやることを求めてくるのでしょう。でも、チャンネルのメインとして出ているのは私で、夫が編集している間は私が子どもを見ています。それなら「家事だって平等でしょ」と思うんです。子どもがいれば散らかるのは当たり前だし、私は生活スペースが確保されていて生ゴミさえなければ気にならないのに、夫は自分の基準を私に押しつけてくる。自分が掃除する姿を配信して「家事やってます」アピールされるのも嫌でした。
夫が家でせわしなくしていると「私も何かしなきゃいけないのかな」とプレッシャーになって気が休まらない。もともとは生活ペースの違いだったけれど、だんだん人間性にまで嫌気が差してきて。
そのうちケンカになると、ふだんは息子をとても可愛がっている夫が「俺は子どもなんて欲しくなかった」と、私が一番傷つく言葉をわざとぶつけてくるようになりました。「これは完全に一線を越えたな」と思いましたね。私も我慢できなくなって、「誰のおかげで動画の再生が回っていると思ってる?」と言い返す。そうやってお互いに相手が最も傷つく言葉をぶつけ合うことが日常化していったんです。
つばささん:僕は防御力がないので打たれる前に攻撃して、相手を言い負かそうとしてしまうんです。ケンカになると勝ちたい気持ちが先に立ち、感情に任せて、相手が一番言われたくないことまで口にしてしまう。ただ、ケンカで出た言葉は本音ではないと思っているので、言われたことはたいして気になりません。それに、夫婦ならすべてさらけ出すのが愛だと思うし、表面上笑顔を取り繕うような夫婦にはなりたくない。僕はかなちゃんに愛情がありますし、嘘はつきたくないんです。
かなみさん:価値観が違いすぎて、自分がどれほど酷いことを言っているのかわかっていない。まるで反抗期の中学生を相手にする母親のような心境でした。これだけ傷つけ合っているのに、なぜか「自分は愛されている」と思い込んでいるのも不思議です。