「子どもの欲しいものと親の与えたいものが違う」。育児中、誰もが一度は経験する悩みです。そんなすれ違いを描いた漫画が注目を集めました。作者のサヤ山サヤさん(@saya_twins1125)はすれ違いを通して、「子どもに自分で選びたい気持ちが育っていた」と気がついたそうです。
「これじゃない」長女の涙に申し訳なさが募り
── サヤ山さんは双子の長女・次女、7歳下の三女の3人姉妹の母親で、ご自身の育児の様子を漫画にしてSNSで発信しています。漫画「親のエゴを子ども達に押しつけていた」が話題となりましたが、どんなことがあったのでしょうか。
サヤ山さん:双子の娘たちが小学3年生のとき、1学期の終わりに近所の文房具店に消しゴムを買いに行ったときのことです。長女が「消しカスを集めるローラー付きの消しゴムが欲しい」と言っていて。長女は目に入ったものをすぐに「かわいい!」「欲しい!」と言うタイプだったので、この時も深い意味はなくいつものように口にしただけだと思っていました。それで、私は「おもちゃみたいな消しゴムだと消えないので、ちゃんとした消しゴムを買おう」と提案しました。
当時、洋服は双子の好みを聞いてかわいいデザインを選んでいましたが、文房具は使いやすいものを使ってほしいと考えて見た目よりも機能性を重視して選んでいたんです。特に消しゴムについては、娘たちは筆圧が弱くて、消しゴムで文字をうまく消し切れていないことがよくあったため、「少しでも書きやすく、消しやすいものを使わせてあげたい」と思っていました。

── お子さんのためを思っての提案だったんですね。
サヤ山さん:文房具店では、長女も機能性を重視した消しゴムを選ぶことに納得してくれたものだと思っていました。ところが、帰宅して買った消しゴムを渡すと長女は肩を震わせながら「欲しかったのはこれじゃない。もっとかわいい消しゴムがよかった」と泣き出したんです。
驚いていると、次女が学校でローラー消しゴムやキャラクターものの文房具が流行っていると説明してくれました。
── お子さんの涙を、サヤ山さんはどう受け止めましたか。
サヤ山さん:恥ずかしい話ですが、それまでの私は「子どもたちのために、使いやすいものを選んであげたい」という自分の気持ちばかりを優先していて。子どもたち自身が「これを使いたい」と思う気持ちや、その年頃ならではの流行に目を向けられていませんでした。
そのときの娘たちは8歳。「自分で選びたい」という気持ちが育っていたことに気づいていなかったんです。自分の価値観を押しつけてしまっていたことに気づき、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
ペンケースを抱えて眠る娘の姿に胸がいっぱいに
── 親はよかれと思っていても、実は子どもは我慢している。そんな経験は誰しも覚えがあることだと思います。
サヤ山さん:文房具や服も、親から「こちらの方がいいよ」と言われれば、子どもは「自分が欲しいものとは違うけれど、仕方ない」とあきらめてしまうことがありますよね。私にも同じような経験があります。ただ、私の両親も何でも否定していたわけではなく、友達との話題についていけるようにとロケット鉛筆やにおい玉など流行しているものはできるだけ取り入れてくれていました。
── そうした反省や気づきをもとに、翌日にはお子さんと好きな文房具を買いに出かけたそうですね。
サヤ山さん:ふたりとも目をキラキラさせながら、本当に嬉しそうに売り場を見て回っていました。欲しいものを次々と買い物かごに入れるので、「好きなものを選んでいいけど、学校で使うものだけだよ!」と、あわてて釘を刺したほどです(笑)。

その日の夜、長女はお気に入りの文房具を詰めた新しいペンケースを大事そうに抱えて眠っていました(笑)。その姿を見て「こんなにも嬉しかったんだなぁ」と胸がいっぱいになりました。合計で8800円と決して安い買い物ではありませんでしたが、買ってあげて本当によかったです。