選手時代に比べて収入は4〜5倍も

──「特殊清掃」の会社を立ち上げるには、研修などを受ける必要があるのでしょうか。
尾身さん:日本では特別な許可は必要なく、事件現場特殊清掃士や遺品整理士といった民間の資格があるだけです。しかも筆記だけなので、基本的には決まったノウハウがないんです。一方、アメリカは銃社会ということもあって、特殊清掃技術の水準が高い。だから、日本の環境にも適した技術を持つブルークリーンという会社のフランチャイズに加盟し、本部のサポートを受けながらノウハウを学びました。
── 具体的にはどんな作業をするのですか。
尾身さん:事件や事故があった現場、孤独死された部屋で血液や体液の除去、激しい悪臭の脱臭、害虫駆除などを行い原状回復します。いちばんきついのは臭いですね。亡くなってから1週間くらいで臭いが出てくるのですが、夏場は死後2日から体が膨張し、脂が出始めます。
特殊マスクをしているので作業中は特に臭わないんですが、防護服を着ていても、貫通して髪や眉毛に汚れがめちゃくちゃつきます。作業が終わったらどこにも寄らず、シャワーを浴びに家に直行。特にこれからの季節、夏がいちばんきついですね。今年は5月初旬から真夏日の暑さだったので、例年より特殊清掃の依頼が来るのが2か月早まりました。夏場は暑さで異臭が強烈なんです。
作業時間は現場によっても異なりますが、1日で終わるところは少なく、ひどいところは3週間から1か月見ていただくことが多いですね。
── 1か月にどのくらいの頻度で特殊清掃に入るのですか。
尾身さん:依頼は提携している葬儀屋、不動産事務所、弁護士、司法書士、行政書士の方々からいただいています。現場自体は月10~15件ですが、そのなかで特殊清掃は2〜3件程度。ただ夏場は多いときで月5~7件と幅があります。
── 収入面ではいかがですか。
尾身さん:会社を始めて4年ですが、収入は選手時代から4~5倍に増えました。運もあると思いますが、僕の場合、経験豊富な方々に支えていただいたから今がある。僕自身の力でやってきたことはたぶん、ひとつもありません。
── それは選手時代に培った人脈であり、いい関係を築いてこられたからでしょうね。
尾身さん:周りの人から「人徳だね」と言ってもらえることが多いですね。学生時代も、サッカーで忙しく、お金に苦労していたら、大家さんや定食屋さんがご飯を食べさせてくれたこともあって。そんな方々がいなかったら、本当に生きていけなかったと思います。
いまは畑で作った野菜を届けたりすることで、少しずつお返しができればなと思っています。