依存からの脱却は「自分の存在を認められたとき」

── その後は実家暮らしに戻ったと。

 

神代さん:実家でしばらく暮らしましたが、仕事も辞めて自己肯定感もボロボロで、さらにお酒を飲む生活になりました。でも、ある朝いつものようにコンビニで500mlの缶ビールを買って、家に戻りながら1本飲もうとしたら、偶然前から車を運転する父の姿が見えたんです。思わず持っていたビニール袋をサッと後ろに隠しました。

 

その後、家に戻ってビールを飲もうと思いましたが、ふと、「今日は朝9時まで飲んでいないな」と気づいたんです。ここで飲まなければ辞められるかもしれない、でも飲みたいと葛藤が始まって。とりあえずビール以外のものを飲もうと思って冷蔵庫を開けたら、入っていたのは賞味期限切れの卵や豆腐、飲みかけの紙パックにリンゴジュースだけ。それで祖母が年金を切り崩して生活を切り詰めていることがわかったんです。もう30歳になるのに自分は何をしているんだ、と気づき、その後、お酒を辞める大きなきっかけのひとつになりました。

 

── 現在はアルコール依存症についての活動や講演会でもお話ししていますが、お酒を飲んでいた時期を振り返るとどんなことを思いますか。

 

神代さん:誰と過ごしても心が満たされず、仮面をかぶることで自分を守って生きていました。私の場合はたまたまお酒に逃げましたが、お酒も性衝動もギャンブルも中毒性があって、依存するのはあっという間。でも抜け出すのはかなり大変です。誰かに辞めろと言われて簡単に辞められないのは自分がいちばんよくわかっています。

 

今はNPOを立ち上げてアルコールや薬など依存に悩む人たちと向き合っています。私の場合は自分の話を心から聞いてもらったとき、存在を認めてもらったときに自然とお酒の量が減っていたし、祖母の生活を見たことがきっかけとなり、後にお酒を断つことができましたが、人によって何が依存から立ち直るきっかけになるかわかりません。

 

でも、自分だからこそ同じ苦しみを抱えている人に寄り添えるのではと思い、日々模索しながら過ごしています。

 

取材・文:松永怜 写真:神代ちよみ