大学院入学後もつらすぎた現実「もう二度と…」
── 資格制限のない受験制度のときは多くの受験者が資格スクールに通いましたが、2004年から法科大学院を経て司法試験を受ける制度に切り替えが始まりました。法科大学院の司法試験平均合格率は、2025年で約34%。認定者・修了者には5年間の司法試験受験資格が与えられます。入学してひと安心という感じでしたか?
平松さん:そうはいきませんでした。定員の8~9割は法学部卒で若者が多く、最初から大きな差がありました。朝から晩まで授業を受けるのは、本当にしんどくて、重度のうつにもなって、精神科も受診しました。でも、薬を飲むと副作用で眠くなって勉強できないし、毎日、泣いてばかりでしたね。目的は司法試験の合格だったので、「周囲は全員敵」という世界でもあり、精神的にきつかったです。
── ちょうど、受験に資格・回数制限のない旧司法試験から、法科大学院修了者または、予備試験合格者を対象にした新司法試験へと、制度が大きく切り替わった時期でしたね。
平松さん:私が司法試験を受け始めたころは、受験資格を得てから「5年間で3回」しか受験が認められていませんでした。でも、思いつめて自殺者が出るなど問題になり、「5年間で5回」受けられるようになったんです。私が1、2回目を受けたころは、まだ3回ルールの時期で、大きなプレッシャーを感じました。1回目のときは試験範囲をしっかりカバーできず、2回目では「いけたかも」と手ごたえを感じたものの、不合格。3回目を受験した年に、5回まで受けられることになり、「まだ3回ある」と、精神的にも余裕を持って臨めたのもよかったのか、37歳で合格しました。
もうこんな苦しい生活絶対イヤだ、二度とやりたくないし誰にもこんな経験も思いもさせたくない、というのが正直なところです。若い学生たちは始発電車で来て自習室に入り、朝6〜9時まで授業の予習をし、その後18時まで授業を受け、やっと解放されるかと思いきや、その後みんな終電まで授業の復習をするんです。
夕飯のときも、みんな参考書片手で、法律談義も楽しそうでした。優秀な人たちは、決して周りを敵とは考えず、「一緒に1回で合格しようね」という感覚だったと思います。私はそんな生活は耐えられず、義務感から自習室に行ってみるものの、YouTubeを見るなど現実逃避していました。そうすることでますます劣等感にさいなまれ、「やらないから不安になる」「やっても理解できず不安になる」恐怖とストレスの連鎖に苦しみました。
── 合格してからのことは考えていたのでしょうか?
平松さん:勉強中は「こんな弁護士になりたい」という将来のことを考える余裕もなく、ひたすら、なんとしてでも司法試験に合格することだけを考えていました。東京も勤務地としては少し考慮しましたが、地元・大分県で働くことを選びました。
2度、重度のうつになった経験から、「実家のそばでのんびり働くのもいいな」と考えたからです。合格後は、試験勉強でバーンアウト(燃え尽き)気味だったので、余裕のある働き方や環境に憧れたのですが、現在は依頼が多く、案件を選ばざるを得ないくらい、猛烈に働いています。
取材・文:岡本聡子 写真:平松まゆき