障害を抱えてわかった「目に見えないバリア」

社会人、勉強会に参加したとき

── 新しい発見があったのですね。

 

瀬戸山さん:障害があっても学ぶことはできる。さらに大学院に進学後は、DIPEx Japan(ディペックス ・ジャパン)という団体の勉強会にも参加するようになりました。ディペックス ジャパンは、たとえば「乳がんの語り」「クローン病の語り」などひとつの疾患や健康状態について、実際に体験した人35-50人くらいにインタビューを実施。何が話されたかを質的な研究手法を用いて分析してWEB上に公開しているんです。同じ病気でも発覚した経緯から、家族や職場の状況や反応など一人ひとり違いますし、体験した人しか語れないことがあって、活動の意義は大きいと思いました。

 

大学院卒業後は研究所で非常勤の研究員になって、ディペックス ・ジャパンの活動にも運営側として参加していきました。

 

── 障害を抱えたからこそ、わかる世界がありそうです。

 

瀬戸山さん:たとえば大学の授業に関しても、プリントが配られても目が見えない人には伝わらないし、教員が声で講義をしても耳が聞こえない人にとっては情報が取れない。社会の多くの仕組みは、意識されないまま多数派に向けてできています。

 

2016年に障害者差別解消法が施行され、大学でも障害のある人が必要としたときの合理的配慮の提供が定められました。学校の規模によって差がありますが、車椅子の学生が使えるようにエレベーターを作る学校もあるし、目の見えない学生が音声で資料等を読むためにテキストファイルを提供するところもあります。いまは大学のホームページ等で障害学生支援の取り組みを公表しているところも多いですが、実際に障害学生本人がどんなサポートが必要かは入ってみないとわからないことも多いので、その都度相談し、合理的配慮の内容を検討していきます。

 

また、授業のサポート環境は少しずつ整ってきても、寮生活やアルバイト、サークルなどの課外活動では、まだまだバリアが多いです。実際に体験された方から話を伺いながら、改善に向けできることはたくさんあると感じています。

障害を抱えて大学進学なんてはなから考えていなかった

── ディペックス ・ジャパンで「障害学生の語り」に取り組んだとおっしゃっていましたが、何か変化はありましたか?

 

瀬戸山さん:「障害学生の語り」のプロジェクトを行い、当事者の方々にお話を伺って語りを視聴できるウェブサイトを公開した際、多くの方に見てもらえたらと思ってパンフレットを作成して広報したのですが、多くの反響をいただいたのが特別支援学校の高校でした。

 

高校の特別支援学校の教員から、「実際に障害を持ちながら大学で学んでいる方々がいることを知って、特別支援学校の高校に在籍している生徒や保護者にも、大学進学という選択肢を伝えられる」と言われました。

 

もちろん大学に行くかどうかは、それぞれの選択肢です。でももし障害があるために大学進学をあきらめているなら、実際に障害があって学びたいことを学んでいる先輩がいるとを伝えられたらいいなと思いました。

 

たまたまですが、障害をもちながら大学で学ぶ機会をいただいて、いま大学で仕事をさせてもらっているので、障害の有無にかかわらず学びたいことを学べる社会のために、できることがあればやっていこうと思っています。

 

取材・文:松永怜 写真:瀬戸山陽子