「介護は自分がしている生活の一部」
── 介護の仕事は初めてだったそうですが、仕事内容はすんなり受け入れられましたか。
仲村さん:僕はまったく抵抗はありませんでした。介護というと多くの方はオムツ替えや先ほどの入浴介助のイメージを抱かれるかもしれません。たしかにそれも仕事の一部ですが、たとえば利用者さんの希望で映画の付き添いをすることもありました。車椅子に乗った利用者さんを映画館の車椅子用の席まで案内し、隣で一緒に映画を観るんです。
── 一緒に映画!それは意外でした。たしかに経験者ではないと、介護職の一部しか把握できておらず、イメージで語ってしまうことがあるのかもしれませんね。
仲村さん:介護とは、利用者さんの生活全般のサポート。要は普段、自分がしている生活の一部なんです。排泄介助で「人のお尻を拭くことが嫌だ」という方もいるかもしれませんが、僕は介護に限らずどんな仕事にも気が進まない部分ってあると思っていて。仕事の対価としてお給料をもらう以上、僕は納得してやっていました。
「人のために」で離職した同期も
── 新卒で採用された20代の方がすぐに仕事を辞めてしまう話がニュースになります。仲村さんは専門学校を卒業後の20代で介護の仕事をしていたんですよね。同じ時期に仕事を始めた方の状況はいかがでしたか。
仲村さん:僕は何も固定観念を持っていなかったのでハードル低く始められたのですが、集団面接のときに僕の隣で「人のためになる仕事をしたい」と言っていた人はすぐに辞めてしまいました。ふたりとも面接で受かったんですけど、僕は「お給料をもらいながら資格を取れたらいいな」という動機で始めて、面接でもこのことを正直に話しました。もしかしたら仕事に対するイメージや、「自分はこうありたい」と言う志を高く持っている人ほど、現実とのギャップを感じてしまったのかなと思っています。
SNSの、キラキラしている部分を見ていると余計にそう感じてしまうかもしれませんが、仕事って表に見えている部分だけではありませんよね。利用者さんも僕らも人なので、現実は綺麗事ばかりじゃありません。「こんなはずじゃなかった」と持っていたイメージと違う面に目を向けられなくなると苦しくなっちゃうと思いますね。
理想論でも、3Kでもない介護現場のリアルを
── 介護の仕事をしながらオーディションを受け、声優としてデビューされました。今の仕事に活きていることはありますか。
仲村さん:介護の仕事は人とのコミュニケーションが何より大切です。コミュニケーションって、どんな仕事にも活きますよね。利用者さんとはもちろん、一緒に仕事をする同僚やコーディネーターさんなどとの連携も必要になってきます。相手が今、「どういうこと考えてるんだろう」と想像することは、声優としてキャラクター性を想像して、役を演じる時に役立っています。
僕は声優デビューしてから1年ほど介護の仕事を続けていたのですが、声優の仕事が入っても勤務をこころよく調整してくれてすごく助かりました。介護職といっても、職場によって働き方は違うと思いますが、僕は人間関係で仕事のしやすさは変わると思いますし、自分で変えられる部分があると思っています。介護の仕事は社会で生きている限り、つながることは絶対あります。
── これまで介護の仕事の経験を伺ってきましたが、声優やシンガーソングライターとして活動している現在の仲村さんの仕事とは違って、人から仕事内容が見えにくいというのも、仕事を始めようというきっかけになりにくいのかもしれませんね。
仲村さん:本当にその通りです。僕は訪問介護で利用者さんのご自宅に伺っていましたし、プライバシーの問題もあるので難しいところがあると思うのですが、なかにはきちんとお話をして許可を取れば、みなさんに生活の様子を見てもらってもいいという方もいらっしゃると思うんです。
少子高齢化と言われて何年も経ちますし、これからますます介護の需要が高まってきます。人手不足を解消するためには、理想論だけではなくもっと介護の現場の現実を知ってもらう機会があればいいですね。きつい、汚い、給料が低いという介護の仕事のイメージを変える抜本的な改革を国をあげてしていくべきだと思っています。
取材・文:内橋明日香 写真:仲村宗悟