今月、介護報酬の臨時改定で介護従事者を対象に賃上げが実施されました。介護職の有効求人倍率は約4倍と、全職種の平均の約1.2倍を大きく上回る超売り手市場ですが、人手不足に歯止めがかからないのが現状です。介護職の経験がある声優でシンガーソングライターの仲村宗悟さんに「仕事のイメージを変える必要がある」と話す理由を伺いました。
条件面から志望者が増えるのもいいけれど
──『THE FIRST SLAM DUNK』の宮城リョータ役を始め、話題作の声優を務める仲村宗悟さんですが、デビュー前に介護の仕事を始め、声優活動をしながらあわせて3年半、現場で働いた経験があるそうですね。
介護業界は人材不足が深刻で、今年6月には通常3年に1度見直しをされる介護報酬が、それを待たずに臨時で引き上げられると話題になりました。この動きについてどう思われますか。
仲村さん:お給料の引き上げにはすごく賛成です。「介護業界は人手が足りない」とずっと言われているなかで、「このくらいもらえたら嬉しい」という条件面から、介護の仕事を始める人が増えるのも僕はいいと思っています。ただ、待遇改善と同時に、介護職のイメージを変える施策を打つ必要もあると感じていて。

介護経験者として仕事の話をすると、「偉いね」と言っていただけることが多いんですが、それって「大変なことをしている」というイメージから出た言葉だと思うんです。仕事である以上、どんな職種であってもみなさん責任を持って取り組んでいるという意味では同じ。まずは「介護は大変」という考えを変えるところからスタートしたほうがいいと思っています。
きっかけは「働きながら資格がとれる」
── そもそも仲村さんが介護の仕事を始めるきっかけはなんだったのでしょうか。
仲村さん:沖縄から上京後、飲食店でアルバイトをしながら寮生活を送り、専門学校に通っていました。ただ、卒業後にひとり暮らしを始めた家から通うのが遠くなるので、別の仕事を考え始め、情報誌でバイトを探していたんです。たまたま目に入った介護職の募集欄を見ると「仕事をしながらヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)の資格が取れる」という誘い文句があって。今は廃止された資格なのですが、親から「何か手に職をつけた方がいい」と言われていたのを思い出し、面接を受けたら無事に受かって。研修期間を経て働き始めたのがきっかけです。
── 介護とひと口にいっても仕事内容は多岐にわたると思います。どのような仕事でしたか。
仲村さん:障がいを持つ方の訪問介護で、ご自宅に伺い、生活の自立を促すサポートをしていました。24時間介護で、シフトは日勤と夜勤の2つ。担当していた方は、脳性麻痺など先天的な障がいを持つ方や、バイク事故などで脊髄損傷を負って後天的に下半身付随になった方もいました。
利用者さんは、自宅の天井にレールを張り巡らせて介護リフトを設置していらっしゃいます。たとえば入浴介助であれば僕が利用者さんの体にベルトをつけてお風呂用の車椅子に乗せ、そこからお風呂で体を洗い、それが終わるとまたベッドまで運びます。
排泄についても、自分でできる方は、ベルトを体につけて介護リフトでトイレまで行き、衣類を下ろすところまでお手伝いします。尿のカテーテルを入れている方や、便を貯めるバッグをつけている方もいましたので、全員がオムツというわけではないんです。食事に関しては障がいを持つ方の自立をサポートできるように、補助が必要な調理工程を担当。
なかにはお話ができない利用者さんもいるのですが、タブレットの機能で会話をしながら対応していました。