「安いピアスだからかゆい」と思い込んでいた高校時代
── ご自身も長年、金属アレルギーに悩まされてきたそうですね。症状が出たのはいつごろだったのでしょうか。
鈴木さん:今から30年以上前の高校生だったころです。ピアスを開けるのが流行していて、私もピアッサーや安全ピンで穴を開け、安価なピアスをつけていました。でも、いつまで経っても耳たぶがグジュグジュして治らないんです。パンパンに腫れて、よくわからない汁が出たり、かゆみも出てきて大変でした。寝ている間にかいてしまって出血し、翌朝にはかさぶたになって剥がれ落ちたものが大量に髪の毛についていて…。
── 病院でも原因はわからなかったのでしょうか?
鈴木さん:皮膚科でも「自分でピアスを開けたから化膿したんでしょう」と言われて、炎症を抑える薬を出されただけでした。ですからアクセサリーをつけてかゆくなっても「安物だからかな」くらいにしか思わなかったんです。
── 金属アレルギーだと正式に診断されたのはいつごろでしょうか?
鈴木さん:インターネットで情報を調べるうちに、「もしかしたら金属アレルギーかもしれない」とは思っていました。ただ、そのころはまだ「高価な素材なら大丈夫」「安いアクセサリーだからかゆくなるのかもしれない」くらいの認識だったんです。
── しばらくは正式な診断は受けなかったんですね。
鈴木さん:はい。そんななか、プラチナのピアスをなくしてしまったことがあったんです。高価だったのでショックで、代わりになるものを探しているうちに、海外では金属アレルギー対応のアクセサリーが広く販売されているのを知りました。当時は自宅でネットショップを始めようと考えていた時期でもあったので、「これなら必要としている人がいるかもしれない」と思い、金属アレルギー対応アクセサリーの販売を始めることにしたんです。
ただ、販売する以上は自分自身もきちんと知識を持たなければいけないと思い、「自分の不調は本当に金属アレルギーによるものなのか、だとしたら何の金属に反応するのか」を調べるために皮膚科を受診しました。
ところが皮膚科医からは、「『なんとなくかゆいから』という理由なら、パッチテストは勧めません」と言われてしまって…。
── 「かゆい」という症状だけでは、パッチテストは推奨されないのですか?
鈴木さん:「アクセサリーでかゆいなら、つけなきゃいいのよ」と言われました。お医者さんの立場からすると、もっともな意見だと思います。というのも、金属アレルギーのパッチテストは複数種類の金属を肌に直接48時間貼り続ける必要があるんです。とてもかゆくなりますし、ごくまれですが新たな感作のリスクも指摘されています。
私の場合は、口の中の金属の詰め物についても一度確認したかったので「診断書を歯科医に提出する必要もあるから」と伝えて、パッチテストをお願いしました。結果、ニッケル、コバルト、クロム、イリジウムの4種にアレルギーがあるという診断でした。
── 実際に診断されて、変化はありましたか?
鈴木さん:それまでは、「高価な素材なら安全」だと思い込んでいました。でも実際は、そう単純ではなかったんですよね。たとえば「18金」は金(Au)100%ではなく75%が金(Au)で、そのほかは別の金属を使用しています。ピンクゴールドには銅(Cu)などが含まれているので、金(Au)は平気でも、銅(Cu)に反応する人はかゆくなってしまいます。「金属アレルギー」とひと言でいっても、人によって反応する金属が違うため、たとえ高価であっても自分に合わない金属が入っていれば、症状が出てしまうこともあるんだと改めて気づきました。
── そうした経験が、現在の協会活動にもつながっているのでしょうか。
鈴木さん:そうですね。そもそもこうした情報は消費者に十分伝わっているとは言えません。「金属アレルギー対応」と表示されていても、どんな金属が使われているのか、販売する側さえも正確な知識を持っていないことがあるからです。そこで金属アレルギー協会では、製造メーカーや販売会社と協力しながら正しい知識の普及に取り組み、消費者・販売者・製造者の間にある知識ギャップを埋めることを目指しています。