「境界知能」という言葉に、ホッとした自分がいる
── ずっと「なぜ自分だけできないのか」という壁にぶつかり続けてこられました。周りからは「努力が足りない」と見られてしまう苦しさもあったのでは。
なんばさん:面と向かって「甘えている」と言われたわけではありませんが、そうした雰囲気を感じることはありました。勉強でも仕事でも、周りはどんどん成長していくのに、僕だけ同じ場所でつまずき続けている。「怠けているんじゃないか」「甘えているだけでは」と、ずっと自分を責め続けてきました。
退職後、心の不調で精神科を受診し、うつ病と診断されました。その際に医師から「発達障害の傾向があるかもしれないので、WAIS-III(知能検査)を受けてみませんか」と勧められたんです。自分でも、これだけできないことがあるなら何か病気や障害の傾向がないと腑に落ちない気持ちがありました。
検査の結果、発達障害、とくにASDの傾向が強いことに加えて、IQ84という数値も出ました。「境界知能」は医師から診断されるものではありませんがIQ84という結果をきっかけに自分で調べるなかで、知的障害には該当しないけれど、平均域よりは低い「境界知能」という領域があることを知ったんです。

── 「境界知能」という言葉にたどり着いたとき、最初に感じたのはショックだったのでしょうか。それとも別の感情でしたか。
なんばさん:ショックよりも、ホッとしたというか「救われた」気持ちのほうが圧倒的に大きかったです。これまでずっと抱いてきた「自分のできなさ」や違和感に対して、ようやく客観的に説明できるものが手に入った。過去が腑に落ちる感覚がありました。あの苦しさは、決して怠けや努力不足だけでは説明できなかった。そうわかったことで、自分を責め続けてきた時間からようやく解放された気がしました。
取材・文:西尾英子 写真:なんばさん