新品のようにすることだけがゴールではない 

ぬいぐるみのお医者さん
「ぬい活」のブームもあり、依頼数は開業時の16倍になった

── 2018年に「ぬいぐるみのお医者さん」が開業。これまで累計1万体のぬいぐるみの治療を手がけています。サービスではご自身の経験を活かし、利用者の安心を第一にしているそうですね。

 

杉野さん:お客さまは家族と離れる寂しさを感じていることをいつも忘れないようにしています。そのため、独自のチャットを使ってお客さまとの密なコミュニケーションを徹底するように。たとえば、治療の方針の打ち合わせのほか、患者さんがこちらに到着した際や各処置が終わった際にもご報告するようにしています。

 

── それは利用する側も安心ですね。どんな依頼がありますか?

 

杉野さん:原型を留めていないほどボロボロになったぬいぐるみの再生や薄くなっている生地の一部張り替え、さらに既製品だけでなく手作りのぬいぐるみの治療など、お客さまが1000人いたら1000個の依頼があります。新品のようにピカピカにすることだけがゴールではありません。

 

先日は、ある部分に縫い目のほつれがあるものの「そこは治さないでほしい」というぬいぐるみの治療依頼がありました。お客さまはそのほつれに何か思い入れがあるのだと思い、ほつれはそのままにし、他の部分までほどけてしまわないよう周辺を補強する処置を行いました。ぬいぐるみと一緒に過ごしてきた時間が長いと、思い出の傷や汚れなどもあるんですよね。

 

それぞれのご希望をていねいにヒアリングして治療のゴールを擦り合わせることで、お客さまの心に寄り添う治療を目指しています。

 

取材・文:阿部祐子 写真:杉野美紀