「とにかく逃げ出したい」電話口でのSOS

── 続けての不妊治療や出産が負担になったのでしょうか?

 

村西さん:負担というか、1歳児を抱えての妊婦生活を甘く見ていたというか…。私は、妊娠がわかってから産むまで、ずっとつわりの気持ち悪さが続く体質でした。1人目のときはそれでも産休に入るまで自分だけで動けましたし、仕事をしていたから気がまぎれていました。

 

ところが2人目妊娠の際は育休中のうえ、切迫早産になったこともあり、ほとんど家で安静にしていなければならず、つわりの気持ち悪さとずっと向き合う形になってしまったんです。そしたら妊娠9か月の頃、家の中で突然、恐怖心に支配されて、いてもたってもいられないパニック状態になってしまいました。

 

念のため抗不安剤を持ってはいたのですが、妊婦が飲んでいいかわからなかったし、胎児に影響があったら嫌なので薬は飲みませんでした。ただ、何日経ってもパニックがおさまる気配はなく恐怖心は募るばかりで、夫に長女を預けて精神科の病院へ行くことにしました。かかりつけの病院は予約で埋まっていたので、その日空いている病院を探して行ったのですが、そこの医師は妊産婦に詳しくないためリスクを回避して「妊婦なら薬は飲まないほうがいいですね」と判断されてしまったんです。

 

── 薬なしでは症状が改善されず苦しいですよね…。

 

村西さん:パニックも続きましたが、おそらくそのとき、うつ症状を併発していたんだと思います。雨の日は特に閉塞感があって最悪で、「とにかくここから逃げ出したい」と、大きなお腹を抱えてベランダから飛び出してしまいたくなったこともあります。これはまずいと思い、次の妊婦健診はまだ先だったのですが、出産予定の大きな病院に、「すみません。今日の予約ではないのですが、先生に診てもらうことはできませんか?ちょっとしんどくて…」と電話しました。

 

電話口の方は「本日の先生の予約は埋まっていますが、どうされましたか?」と聞いてくれたので、「朝からパニックがひどくて、もう生きていたくない気持ちなんです」と正直に伝えました。「すぐに来てください!」と対応してくれ、急いで病院へ向かいました。

 

── SOSを受け取ってもらえてよかったです。

 

村西さん:診察の際、医師の先生は産科医療のハンドブックを見せながら「妊娠中、もちろん飲んではいけない薬もありますが、薬の強さや種類によっては飲める抗うつ剤や抗不安薬はあります。産後も、正しい薬を選べば母乳育児を諦めなくていいと、ここにちゃんと書いてあるでしょう?だから、薬が絶対だめというわけではないんですよ」と言ってくださったんです。

 

手持ちの抗不安薬を調べた結果、飲めることがわかって安心はしたのですが、問題はその病院に精神科がなくて連携している精神科も空いておらず、すぐに専門的な治療が受けられなかったこと。行きたい精神科のクリニックは数か月先まで予約でいっぱいでしたし、なんとか抗不安薬や漢方薬でしのぎながら、帝王切開での出産予定日まで過ごそうと思っていたのですが、予定日の2週間前に限界が来てしまいました。臨月ってただでさえ動くのも苦しいし、つわりはいまだ続いているし、家にいてもパニックになりそうになるから耐えられそうもないと。そこで手術予定を1週間早めてもらい、37週で出産しました。