40代で出産経験も「大丈夫だと、思わないで」

── 5回目の移植以降は、鍼治療や漢方薬など東洋医学も取り入れていたそうですね。 

 

村西さん:そうです。治療を再開した2020年9月ごろから鍼治療を、2020年12月からは漢方クリニックにも通い出しました。食生活も和食中心にするなど見直して、医療に任せるだけでなく妊娠しやすい体をつくろうと、いろいろ試しました。6回目と7回目は凍結していた36歳の頃の卵子を一部使ったのですが、妊娠に至らず…。ただ、鍼治療や漢方薬は私には合っていたようで、徐々にその成果が出ているのを、自身の体調のよさでも感じていました。

 

それが治療に結果として出たのは2021年の3月です。3回目の採卵をしたのですが、私の平均採卵数がそれまで10個前後だったにも関わらず、そのときはなんと21個も卵子が採取できたんです。すべてに顕微授精をするとそのうち12個が「胚」になり、培養士さんがランク付けした一番いいものを2021年5月に移植しました。これが8回目の移植になったわけですが、この時はERA(子宮内膜着床能)検査をして着床できるベストなタイミングを計り、さらに子宮内膜スクラッチ(あえて軽く子宮内膜を傷つけて着床を促進する治療)を実施して挑みました。その結果、妊娠することができたんです。

 

── そして41歳で母に。出産後はどんな気持ちになりましたか?

 

村西さん:妊娠したことは嬉しいんですけど、何度も不妊治療した末の高齢出産ですし、無事に産めるかずっと心配でした。コロナ禍の不安もあったうえ、予定日を過ぎてから逆子になってしまったので、緊急帝王切開での出産に。だから、娘が生まれて抱っこして初めて実感がわいて「喜んでいいんだ」と思った気がします。母乳をあげながら嬉しい気持ちがこみあげてきました。夫も娘にメロメロで、自分は母乳があげられないから、お風呂だけは必ず入れてあげたいと、毎日入れてくれていました。

 

── 現在はこうして治療の経過についても取材を受けるなどして発信されています。

 

村西さん:「41歳と43歳で子どもを産んだ」という数字だけ切り取られて、若い女性や会社の後輩たちに「その年齢でも産めるなら焦らなくて大丈夫か」と思ってほしくないんです。たとえば、私は若い頃から、月経の出血量が異常に多い「過多月経」でしたが、特にその対策をすることなく過ごしてきました。でも、婦人科の医師と話すうちに、生理をもっと薬でコントロールしてもいいということを知ったんです。そして不妊治療を始めてからは、「若いうちからピルなどを服用して排卵を止めておけば、卵巣機能の温存につながる」ということも知りました。たらればですが、普段からもっと自分の体や将来の妊娠に対して意識高く生活していたら、私の不妊治療はここまで大がかりなものにならなかったのではないかと思っています。

 

また、今でこそ体外受精は保険適応になりましたが、それには回数や年齢制限もある。治療のお金も、わが家は高級ミニバンが買えるくらいにはかかってしまいました。もし、妊娠に適した時期に自然と妊娠できていたら、そのお金は住む家や子どもの教育費に回せたはずです。私と同年代の女性アナウンサーは特に、妊娠・出産したら仕事がなくなるのではないかという漠然とした不安があったかと思いますが、今はもう時代が違います。後輩たちに相談されたら必ず「産めるとき、産みたいときに産んで、そこからまた働けばいいよ」とアドバイスしています。先人として、社会や会社をそういう風潮にしていかなければならないとも強く思います。そして妊娠を後回しにした結果、何が起こるかを今からきちんと知っておいてほしいんです。

 

卵子凍結も、保存期間が長引くと100万円単位のお金がかかりますが、実際の使用率は5~7%という低いデータが出ています。もちろん、自然妊娠したために使う必要がなかった、というケースもあるとは思いますが、凍結保存したことがお守りとなって安心して、さらに仕事に打ち込んだり、パートナー探しに真剣に取り組めなかったりした人も見てきました。

 

私自身、凍結していた卵子は結果的に妊娠に結びつきませんでした。もし将来子どもが欲しいという希望があるなら、「今は高齢でも産めるから大丈夫」「卵子を凍結しているから大丈夫」とは思わずに、加齢による卵子の数や質の変化、妊娠確率の低下についてもっと調べて、普段から子宮頸がん検診を受ける、生理の不調や困難を放置しない、ことを心がけてほしいです。

 

そして女性側のリスクばかり言われますが、男性側の年齢が上がることのリスクも近年研究が多く発表されています。男性も女性も人生100年時代。仕事のキャリアは後からいくらでも挽回できるから、結婚や出産を迷っている人がいたら背中を押してあげたいですね。

 

取材・文:富田夏子 写真:村西利恵