ブラジル戦の敗退で「間違いなく意識が変わった」

── ドイツで開催されたそのW杯では、残念ながら日本はグループステージで敗退。最後のブラジル戦で巻さんはスタメンとして試合に初出場されました。試合の結果によっては決勝トーナメント進出の可能性も残されていた状況でしたが、当日はどのような気持ちで試合を迎えていたのでしょうか。

 

巻さん:メンバーに選ばれ現地入りしたものの、グループステージの第1、2戦目はウォーミングアップすらすることなく、試合出場のチャンスはありませんでした。そういった状況のなかで迎えた第3戦目のブラジル戦も、実は試合に出ることが決まったのはギリギリのタイミングだったんです。

 

「せっかくドイツまで来たんだし、W杯の舞台で何もしないで終わらせず積極的にチャレンジしよう」とワクワクしながら、「この舞台で自分には何ができるんだろう」と冷静に自分に問いかけながら、ピッチに向かった記憶があります。

 

── 人生初の大舞台とおっしゃっていましたが当然、プレッシャーも感じられていたと思います。W杯前後は眠れない夜もあったのでしょうか。

 

巻さん:試合に出られるチャンスが限られていたので、割と毎日リラックスしながらも、いい緊張感を持って過ごせていたんです。もちろん試合に出たいという気持ちは強かったですけど、程よい緊張感が保てていたと思います。試合前にミーティングがあるのですが、その少し前に監督に呼ばれて「スタメンいけるか?」と告げられました。

 

── サッカー王国と呼ばれるブラジルとの対戦に特別な思いはありましたか。

 

巻さん:当時、世界最高のチームのひとつと言われていたブラジルとの対戦は楽しみでしたね。自分の力がどれぐらい通用するのかを試してみたかった。チームとしてはもう負けられない状況だったので、自分の力を試しながらも勝ってやろうという気概を持って臨んでいました。

 

ブラジルはほぼ決勝トーナメント進出を確実なものにしていたので、前半の途中まではおそらく本気ではなかったと思います。だから僕たちは「意外とできるんじゃない?」という手応えを感じていたのですが、そこからブラジルが少しずつギアを上げていって。徐々にボールに触れなくなり、立て続けに得点されてしまいました。本気になったブラジルは手が付けられなかったですね。

 

そういったメリハリも含めて、「これが世界レベルなんだ」というものを見せつけられましたし、大きな差も感じました。ただ、「もう一度、この大舞台でチャレンジできるよう、4年間頑張ろう」という思いにさせてくれたこの試合は、間違いなく自分の意識が変わった瞬間でした。