今にもつながる恩師・オシム監督の教え

巻誠一郎
現在は自身が運営するスクールで子どもたちにサッカーも教えている巻さん

── W杯や代表での経験はもちろんですが、巻さんにとっては所属チームの監督、オシムさんの存在が大きかったと聞いています。彼の教えが今にもつながっている部分はありますか。

 

巻さん:オシムさんがいなければ、僕は間違いなくプロになって3年以内にクビになっていたと思います。本当にいろんなことを吸収させていただきましたが、一番の学びは、普段のトレーニングから試合をイメージして全力でプレーすることですね。

 

日本の選手は練習前早く来てストレッチをしたり、シュートなど居残り練習をするなど、すごく勤勉で長い時間トレーニングをするんです。でもオシムさんはそれをすごく嫌っていて、与えられた時間のなかでベスト尽くすことを常に求めていました。だから当時は1回の練習が終わると心も頭もクタっとなって余力がないくらい全力をぶつけていたんです。

 

引退後、目の前のことに全力で向き合うことができているのは、そのころのトレーニングでの感覚が植え付けつけられているからこそ。与えられた時間、環境、仕事のなかで持っている力を100%出せているのは、オシムさんの指導もとでプレーしたからこそですね。

W杯北中米大会、元日本代表の注目は

── まもなくW杯北中米大会が開幕します。現在の日本代表をどのように見ていますか。

 

巻さん:僕が代表でプレーしていた当時の日本代表は、グループステージを突破したら及第点を与えられるレベルでしたが、今はベスト4や優勝を狙えるほどの力がありますし、フィジカル的にもメンタル的にも非常に高いレベルにあると感じますね。

 

── 周囲からの期待値も高いなか、これまで以上の結果を出すためにポイントになるのはどんなことになるでしょうか。

 

巻さん:現在の日本代表に名を連ねている選手は、チャンピオンズリーグや、世界のトップリーグでレギュラーとして活躍している選手がほとんどです。周りからのプレッシャーや外国人に対するコンプレックスはほとんどないといっていいと思います。それに、日本の選手は苦しいときや困ったときに、それを察することができる細かやさも兼ね備えていますから、W杯でも最大の武器になるんじゃないかなと思いますね。

 

── 普段サッカーを見なくてもW杯には興味があるという人も多いと思います。どういう点に注目するとよりW杯を楽しめるでしょうか。

 

巻さん:スーパープレーに一喜一憂するのもいいですし、勝敗にフォーカスをあてるのもいいですし、たとえば「この人イケメンだな」とか「この人はいつも面白い発言をするな」と選手に興味を持ったり、人それぞれで楽しみ方は違っていいと思います。入り口はどんな形であれ、それがサッカー、選手への関心に広がっていくと思いますから。固定観念にとらわれずにまずは試合を見てもらって、自分なりの楽しみ方を少しずつ見つけ、増やしていければ最高だと思います。

 

── 巻さんがこのW杯で楽しみにされていることはどんなことでしょうか。

 

巻さん:僕はW杯後に主力でプレーするようになったんですが、そこでプレッシャーや責任感を嫌というほど思い知らされてきただけに、日本代表の躍進には期待したいですね。シンプルに応援することももちろんですが、海外の様々なスタイルのサッカーに対して日本代表がどのように対応していくのかにも注目したいです。

 

取材・文:石井宏美 写真:巻誠一郎