「においへの過敏な反応」が生まれた背景は

なぜこれだけにおいに悩む人が増えているのでしょうか。中道さんは、今の時代はにおいに厳しすぎるからだと考えているそう。テレビCMなどの影響も大きいと中道さんは指摘します。

 

「洗濯洗剤や柔軟剤のCMなどから、『におうのは悪いこと』と読み取れてしまうケースもあります。本来、体臭はあって当然のものなのに、現代社会では許容されにくい。ほんの少しのにおいにさえ敏感になっている空気を感じます」

 

カフェゆあのあ
グリーンを基調にした店内はリラックスできる

社会インフラが整備され、社会全体が清潔になっていることも、においに敏感になっている原因のひとつだと分析しています。

 

「私が子どもの頃は、郊外だったこともあり牛やブタを飼う農家も近くにありました。だから、フンや動物のにおうが漂うのは当たり前。街を歩いていても、生活臭やドブのにおいがするのも自然なことでした。でも、今はそういった場所自体が減っています。無臭が当たり前だから、なおさら神経質になっている気がします」

においを指摘されたら人格否定にさえ感じる人もいる

海外では、日本ほど「無臭」への圧力が強くありません。中道さんは、日本でもにおいをおおらかに受け止められるようになってほしいと訴えます。

 

「清潔思考の今の日本では、においの指摘をされることは、死にたくなるほど恥辱的な問題だと感じます。そう感じないように、もう少し気軽に話題に出せるものになってくれたら…と願っています」

 

キャリアもプライベートも人柄も完璧な人に対し、「せめてあの人がワキガだったらいいのに」と揶揄する言葉を耳にしたときは、体臭が人格否定の最たるものだと感じたといいます。

 

「においに悩む人たちはこうした冗談さえ笑い飛ばせず、追い詰められていくのです。無臭であることを求めすぎた結果、生きにくい社会になっているのではないでしょうか。もっとみんながにおいに寛容になってくれたらいいのに…と願っています」

 

取材・文:さいだ多恵 写真:中道亜希子