俳優として第一線を走りながら、地元・大分で畑仕事に汗を流す財前直見さん。還暦を迎えた今も、「やりたいことがたくさんある」と目を輝かせます。「60歳といえば昔はおばあちゃんのイメージだったけど…」、歳を重ねながらも前向きに今を生きる、財前さんの揺るがない、しなやかな「強さ」とは。
「自分が誰かわからなかった」多忙な30代の記憶

── 財前さんは41歳で地元・大分に移住する以前は、俳優として多忙な日々を送られていました。
財前さん:30代は仕事一筋で、正直に言うと忙しすぎて当時の記憶がほとんどないんです(笑)。特に女優は他人をずっと演じる仕事です。続けるうちに生活の中に「自分」がいなくなってしまって。「自分はいったい何者なんだろう」と足元が揺らぐこともありました。
忙しさと緊張で気持ちが張りつめて、心が折れそうな時に、自分を繋ぎ止めてくれたのが「書道」でした。毛筆で自分を勇気づける言葉を書き続けるんです。
相田みつをさんのような味のある字が書きたくて、わざと左手で書いたりもしていました。でも書きすぎたせいで、左手で書くことに慣れてうまくなっちゃって(笑)。「逆もまた真なり」とか、心にとどめておきたい言葉や自分を励ます言葉をたくさん書いていましたね。