キャリアの断絶よりも「今」の優先順をとった
── 自分が思い描く子育てが、東京のルールでは難しいと感じたのですね。
財前さん:そうですね。そんな折、生後9か月の息子を連れて大分の実家に帰省したんです。そうしたら、あまりにも居心地がよくて(笑)。畑で野菜を育てたり、自然の中で息子と過ごす生活を続けるうちに「この環境で子育てがしたい」と思うようになりました。一大決心というよりは、私が求めている子育てを探していったら大分に辿り着いた。ただ、それだけのことなんです。
── 女優というお仕事は産休・育休制度が充実した会社員とは立場が異なりますよね。キャリアが途絶えることに、不安はありませんでしたか?
財前さん:不思議とまったくなかったですね。理由はすごくシンプルです。それまでは「女優」という仕事が自分のなかで一番大切だったから、生活のすべてを女優業に費やしていた。でも今は、その大切なものが「子ども」に変わった。だから今度は、子どもを一生懸命育てるだけ。大切なものが変わって、やるべきことがシフトしただけなんです。
── なるほど。とはいえ、実際に現場を離れるのに勇気はいりませんでしたか?
財前さん:そうですね。そこはやはり自分自身、年齢を重ねてから生まれた子だったというが大きいのかもしれません。とにかく、少しでも息子と一緒にいたかったし「息子のなんでも第一目撃者」になりたかったんです。もちろん、子育てにはいろんな考えがあり、家庭ごとの状況があると思います。でも私は「寝返りをうった!」「立ち上がった!」という息子の初めてを、全部自分の目で見届けることが、何よりも幸せなことだと思ったんです。当時、その先のことはあまり考えていなかったと思います。息子のそばにずっといるためには、仕事を休むことが一番よかったというだけです。