「立ち止まらなければ沈まない」どん底を越えた先の境地

── 脳性まひの娘さんの医療費を稼ぐために日本に出稼ぎに来て以来、多くの出来事を体験されました。激動の人生を振り返って、今はどう感じられていますか?
ルビーさん:振り返ってみると、本当にジェットコースターみたいな人生ですよね。良いときもどん底も経験しました。振れ幅が大きいんです。自分にも至らない部分があったけれど、事実と違うことを言われてたくさん傷つきました。でも、今はそれを否定したり「わかってもらおう」という気持ちはまったくないですね。大切な人たちに囲まれたこの生活が守れればいいと、それだけです。
── 「お騒がせ」と言われた時期もありましたが、その強さの秘訣は。
ルビーさん:私はどんなときでも常に前向き。「負けてたまるか」っていう気持ちで人生を這い上がってきました。「立ち止まらなければ沈まないじゃん!」と自分に言い聞かせて。いろんな経験が私を強くして、この穏やかな日々に連れてきてくれた。毎日に感謝しかないです。
── 今後の夢はありますか?
ルビーさん:フィリピンの妹たちも全員大学を卒業して自立して、それぞれ幸せな人生を歩んでいるので、今の生活を大切に、周りが健康でいられれば。あとは、映画に出て職場の人たちを試写会に呼び、「ほら!私、本物のルビー・モレノでしょ!」って証明するのが、最近のささやかな夢ですね(笑)。
…
「私が誰であるか」を証明することに、疲れてしまう日はありませんか。
かつてのスターであることを誰も信じない職場で、ピザを焼きながら笑うルビーさん。彼女が手に入れたのは、過去のレッテルから解放された「本当の自由」でした。「立ち止まらなければ、沈まない」。 その力強い言葉は、不器用な毎日を必死に泳ぐ私たちの、小さくて頑丈な浮き輪になってくれるのかもしれません。
取材・文:大夏えい 写真:ルビー・モレノ