心身の限界を知って、変わった目標の捉え方
── 病気を経験したことで、仕事への向き合い方にも変化があったのでしょうか。
Mr.マリックさん:以前は成功することや視聴率ばかりを追い求めて、ムリをしてでも上を目指そうとしていました。でも、病気をしてからは考え方が変わりました。遠くの目標を追うのではなく、目の前の1回1回を、丁寧に心を込めてやる。最近は、次世代の育成にも力を注いでいるところです。
── かつて激しくぶつかった娘のLUNAさんとの関係は、その後どうなったのでしょう。
Mr.マリックさん:娘が家を出て、約20年、まともに会わない時期が続いたんです。娘はその間、親の力を借りずに歌手として地道に活動していました。お互いの電話番号も知らず、LINEもやったことがない。連絡をいっさい取らない状態が長く続いていたんです。
それが、番組のスタッフが娘の正体をたまたま知って、収録中にサプライズでLINEをつないでくれたんです。かつては忙しすぎて親子がバラバラになりましたが、今度はテレビが再び引き合わせてくれた。
今では、親子でステージに立つ機会も増えていて、音楽とマジックを組み合わせた公演を各地で行うようにもなりました。あのどうしようもなかった娘が、数十年後に私の活動に再び火をつけてくれる存在になるなんて、人生はおもしろいですね。
── 70代を迎え、プライベートでも新しい楽しみを見つけていらっしゃるとか。
Mr.マリックさん:最近はマギー司郎さんと一緒に、ネイルサロンに通うのが習慣になっているんです。「芸能人は歯が命」なんて言葉がありましたが、「マジシャンは手が命」。つねにお客さんの視線が手に集中するわけで、キレイにしておかないといけません。マジシャンの手は男性か女性かわからないのが、いちばん理想的なんです。

── たしかに爪までピカピカですね。いつごろから意識されていたのでしょう。
Mr.マリックさん:十数年前、まだネイルケアが今ほど一般的じゃなかったころです。ホテルオークラのラウンジでマジックをしていたとき、男性のお客さんの爪がやけにピカピカしていて。思わず「それ、何ですか?」と聞いたら、爪磨きだと教えてくれた。伊勢丹の化粧品売り場にあると聞いて、すぐに買って磨き始めました。
海外へマジックをすると、現地のマジシャンが私の爪を見て「どこでやったんだ?」と驚くんです。日本にはこういうものがあるんだと、お土産に爪磨きを持っていくとずいぶん喜ばれました。それから、本格的にネイルケアに凝り始めたんです。ただ、爪磨きだとどうしても爪が削れて薄くなってしまうので、今はサロンで「ジェルネイル」をしてもらっています。私は爪が伸びるのがすごく早いんですが、健康な証拠だと言われます。まだ成長期なのかもしれません(笑)。
取材・文:西尾英子 写真:Mr.マリック