銭湯帰りに待つ「最高の贅沢」

── 昔からそうした考え方をされていたのですか?

 

加藤さん:いえ、そんなことはないと思います。闇営業問題で謹慎になり、その後、相方の芸能界引退でコンビが解散して…。自分のせいとはいえ、あのころは本当に人生どん底でした。あの時期を経験したからこそ、何げない日常の幸せを実感できるようになりましたし、周りの人に感謝をして過ごすようになりました。自粛期間に熊本県の介護施設で1か月働かせていただいた経験も、価値観を変える大きなきっかけになりましたね。

 

── 加藤さんが幸せを感じる「プチ贅沢」なお金の使い方を教えてください。

 

加藤さん:僕にとっての最高のルーティンは、銭湯帰りに鳥貴族で「チョイ飲み」することですね。週1回、自宅のそばにある銭湯に通っています。1回550円ですが、回数券を買っているので500円に。ちょっと歩いて遠くの銭湯に行くことがたまにあります。帰り道にある「鳥貴族」に寄って、カウンター席でビールを飲みながら焼き鳥を食べるのが、自分にとってのご褒美タイムです。Wi-Fiが飛んでいるので、YouTubeは見放題。音楽を聞いたり、投資の取引を見たり。風呂上がりなので、少量でもめっちゃ酔っ払います(笑)。

 

その状態で好きな音楽を聞いているとハイになって、すごく幸せな気分になるんですよ。銭湯代とチョイ飲み程度だから、せいぜい2000、3000円くらいしかかかっていないけれど、なんだか遠くに旅行に行ったかのような高揚感があるんです。

 

── いいリフレッシュの方法を持っていらっしゃいますね。

 

加藤さん:そうですね。多少のストレスはありますが、それくらいのほうが生活に張り合いがあっていいと思っています。ただ、消防設備士の副業で収入が安定したことや、FP2級や宅建を取得してマネーの知識を身につけたことで、以前抱えていたお金に関する大きな不安は、いまではほとんどなくなりました。マネーリテラシーは生きる力になると実感しているので、それだけは子どもにもしっかり伝えていきたいなと思っています。

 

 

家族ができたことやFPの資格をとったことで、お金について考える機会が増えたと話してくれたザブングル加藤さん。人生観や価値観が変わったのは、謹慎で人生のどん底期を経験した過去と、そのとき体験した熊本での1か月の介護経験が大きかった。そう当時を振り返って話してくれました。

 

PROFILE ザブングル加藤さん

ざぶんぐるかとう。1974年、三重県出身。1999年に松尾陽介とお笑いコンビ・ザブングルを結成。2007年に『M-1グランプリ』で初の決勝進出を果たし、6位入賞。21年3月に、相方の芸能界引退に伴い、コンビを解散。以降、ピン芸人として活動。多くのバラエティ番組に出演するほか、俳優としても活躍。20年に消防設備士試験に合格し、消防設備の方面でも精力的に活動している。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/ザブングル加藤