2014年ソチ五輪の女子スキーハーフパイプで銅メダルに輝いたプロスキーヤーの小野塚彩那さん。アスリートと育児の両立が難しいなかでも妥協せず、現在はフリーライドの世界で果敢に挑戦を続けています。母、妻、そしてひとりの女性として彼女が大事にしている価値観とは── 。(全2回中の2回)

母になってもキャリアを諦める必要はない

── プロスキーヤーの小野塚さんは昨年末に「挑戦する母」をテーマにしたドキュメンタリー映像「MOMENTAL」を制作し、公開しました。スポーツ選手としては珍しいように感じますが、どのような思いでこの作品を作ったのでしょうか。

 

小野塚さん:私はプロスキーヤーとして活動中に出産し、育児と並行するなかで睡眠時間の減少や育児ノイローゼなどを経験しました。プロスキーヤーとして全力でスキーに向き合える時間は少なくなり、アスリートとしての自分と母として自分に葛藤し、キャリアと育児との両立を考えるようになりました。女性は母親になったら何かを諦めないといけないのか。この作品では私のありのままの姿や葛藤を描いていて、母親になっても挑戦を続けること、失敗したとしても挑戦することに意味があるというメッセージを、生きづらさを感じている女性に届けたいと思っていました。

 

フリーライドの世界で活躍を続ける小野塚さん

今は私のように母親になってもキャリアを諦める必要はないのでは、という考えを持った方が増えているのかなと感じます。それでも、たとえば夫の方が収入が多いからと女性側が家事を負担したり、弱者になるのは圧倒的に女性の方が多い。母親になったからといって、私は自分が何かを諦める必要もないと思っていますし、今後はますますそういう世の中になって欲しいと願っています。

 

── ご自身の考えを明確に示すことで周りも変化してきたと感じますか。

 

小野塚さん:ドキュメンタリー作品の映像内で「1歩踏み出してほしい」と女性に対して送ったメッセージは、女性を支える男性たちに対してのメッセージでもあったんです。「頑張っている奥さんをサポートしようと思いました」という反響をいただいたり、家族のあり方や家族における自分の立場を考えるようになったという声もいただききました。作品を見てくださった方で、お仕事でもご一緒させていただくことが多いカメラマンさんもお子さんや家のことは奥さんに任せっきりでいっさい考えてこなかったという気づきになったと言ってくださいました。

 

── 小野塚さんのご主人の変化はいかがですか。

 

小野塚さん:もともとすごくサポートはしてくれていますし、私がやりたいことに対して「NO」を言ったこともなく、私の仕事に対しての理解もあると思います。私の仕事は私にしかできないと理解してくれているので、サポートは引き続きしてくれますし、もともと協力的でしたが、以前よりもさらに協力的になりました。

 

アスリートの活動に加えて、地元の南魚沼市で世界へ羽ばたく次世代を育成するためにAYANA’S RETURN PROJECTに取り組んでいる

── 競技を続けているころから海外を転戦し、海外の方ともコミュニケーションを取っていると日本人との価値観や文化的な違いもさまざまな面で感じるのではないでしょうか。

 

小野塚さん:海外の人と仕事をしていて感じるのはオンオフの切り替えが明確なことですね。休みの日は電話も出なければ、メールも返ってこないんですよ。休みの日にメールすると、「5日まではホリデーだから返事はしないよ」と返ってくる。でも、私はそれでいいじゃんって思うんです。