作家の中村うさぎさんは、2013年に難病・スティッフパーソン症候群の疑いがあると診断されました。車椅子生活を余儀なくされ、夫の介護を受けながら生活を送ります。夫は自身がゲイであることを公表しており、中村さんはいわゆる「普通」とは少し異なる夫婦関係を築いてきました──。(全4回中の3回)
入国管理局で「じゃあ、結婚すればいいんですね」
── 中村さんは、スティッフパーソン症候群のような症状を発症後、車椅子生活となりました。ひとりでトイレに行くのも困難な状況のなか、旦那さんが献身的に介護してくれたそうですね。その旦那さんは、ゲイであることを公表されていますよね。
中村さん:そうですね。1997年にゲイである今の夫と結婚しました。出会った当時から夫とは飲み友達で、とても仲のいい女友達のような関係性でした。夫は香港人で、当時は香港に帰らなければならない状況だったんです。それで、日本に滞在するためのワーキングビザを取得するため、入国管理局に一緒に行きました。
── 昔からのご友人だったんですね。
中村さん:そうなんです。夫はどうしても香港に帰りたくなくて、日本にいたいという強い思いがありました。でも、入国管理局の職員に「スキルのない外国人にはビザは出せない」と。「どうしても日本にいたいなら、日本人女性と結婚すればいい」と失礼な感じで言われたんですね。私は職員の物言いに腹が立って「じゃあ結婚すればいいんですね!」って言ったんです。そこから、紆余曲折を経て本当に結婚することになりました。
── すごい急展開で結婚されたんですね。
中村さん:そうですね。一般的な恋愛結婚のご夫婦と比べて「愛し合っていないよね」と言われることはありました。お互いに恋愛感情はなく、当然性的な関係もないですし、子どもも作らないわけですから。私たちのことを仮面夫婦のように思っている人も多いみたいです。でも、じゃあ「夫婦愛」って何?と思うんですよ。
── 中村さんご夫婦は一般的な「夫婦」ではないのかもしれませんが、旦那さんは中村さんが車椅子生活になったあとも、ほぼ24時間体制で介護されてきました。そもそも夫婦であっても、愛が冷めてしまっている方はいるかもしれません。
中村さん:性的な関係があるかないかでいえば、普通の夫婦だってレスになることがありますよね。そう考えると、最終的には相手をどれだけ思いやれるか、理解しているかのほうが夫婦愛につながると思うんです。お互いの相性がよくなければ、夫婦として成立しないですしね。そういう意味では、私たちは「普通の夫婦」ではないけど、2人の間に愛はあると思っています。
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