学校ではまぁまぁの人気者だったけれど

肉乃小路ニクヨ
仕事が終わり、食事中の一枚

──  80年代は『積木くずし』のドラマが流行り、中学校が校内暴力で荒れていた時代でした。

 

肉乃小路ニクヨさん:そうでしたよね。でも、意外と平和で楽しい中学生活をおくることができました。コミュ障で陰キャではあったものの、おしゃべりが好きだったので、自分で言うのもなんですが、よくわからない人気があって。体育の時間に転んで手を複雑骨折して入院したときには、なぜかいちばん不良だった子がお見舞いに来てくれたり、放課後に先輩たちから「なんか歌って」とリクエストされたり。中2からは生徒会役員を務めました。新聞やテレビを見て育ち、そこで知る大人の世界に自分を合わせようとずっと背伸びをしていたので、なんだか風変りでおもしろい子と思われていたのかもしれません。あとは…やっぱりかわいかったんじゃないでしょうか(笑)。

 

一方、高校(渋谷教育学園幕張高校)では、知っている人が誰もいなかったので、ゼロから人間関係を始めなくてはいけません。本来コミュ障で、人との距離の詰め方を知らなかったので、1学期はほとんど誰とも口を聞かずに過ごしました。でも、ある程度慣れてくると、高校でもまあまあ人気者に。なんだか言っていて恥ずかしくなってきました(笑)。

 

ただ、学生時代は女性っぽさを出さないように気をつけていましたね。小学5年くらいのときに、東京から来た転校生の美少年に胸がときめき、ゲイであることを自認しました。その子の前ではドキドキして急に走り出しちゃったりして。肥満児だったので、ぶつかって何人か吹っ飛ばしてしまったことも。中学校でもその子のことをずっと思い続け、遠くの窓からこっそり眺めていましたね。もちろん思いを口に出すことはしませんでしたけれど。

 

── 思春期には葛藤されたこともあったのでは。

 

肉乃小路ニクヨさん:もちろんありましたよ。当時、どのメディアでも同性愛は変態のジャンルとして扱われていましたし、とんねるずの石橋貴明氏扮する「保毛尾田保毛男」のギャグがウケていた時代。個人的にはあのギャグは全然嫌じゃないのです。ただ「隠さなくてはいけないことなんだな」と感じていました。ですから、絶対に周りに気づかれないにしようと、クラスメイトともある程度、距離を置いてつき合っていました。もしもクラスメイトに恋愛感情を抱いてしまうと、やっかいですから。そして、バレないようにと自分なりに考えた策が「不思議ちゃん」キャラだったんです。

 

── 不思議ちゃんキャラ…ですか。

 

肉乃小路ニクヨさん:恋愛なんて私、関係ありません、みたいな妖精さんキャラを演じることで自己防衛していたんです。ただ、それほど他人に興味があるタイプではないので、恋愛が叶わなくて苦しいという気持ちよりも、同性愛が変態だと思われていることのほうがつらかった。割と優等生だったので、マジョリティから外れてしまうことへの怖さがずっとありました。