カラオケボックスの廊下で新曲が流れて思わず録画を
── 歌手になってから、ご家族はどう応援してくれていますか?
木山さん:僕が歌手になったからといって、子どもも妻も何も変わらなくて、それがすごく気楽で、ありがたいんですよね。子どもたちは、「芸能界には興味ないけれど、お父さんが楽しそうに歌っている姿はいいと思うよ」っていつも応援してくれています。
── 昨年10月には新アルバム『贈る歌』を発売されました。アルバムを通して伝えたいことはありますか?
木山さん:若い人たちに向けて作ったアルバムなのですが、「あなたたちは、自分の力で世の中を変えていける力を持っているのだから、大人に遠慮しなくていい」という気持ちを込めました。
最近の若い人たちって、まわりの気持ちを汲むことを優先して、遠慮しすぎている場面が多いように思うんです。それが、まるで過去の自分を見ているようで。幸せならいいんだけど、あなたたちは、自分で考える力を持っているし、学校でも辛い思いをたくさんしている。何でもできる。失敗したって反省すればいいんだから、失敗も許してあげて、自分を信じて、前に進んでいいと思うんです。
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── この前入ったお店で『君に贈る歌』が流れていたんです。しかもフルコーラスで。思わず聴き入りました。
木山さん:本当ですか!うれしいなあ。あの曲はすごく苦労して作ったぶん、思い入れがあるんです。この前、僕もカラオケボックスで練習していて、廊下に出たらたまたま『君に贈る歌』が流れていたんですよ。もううれしくて、歌いながら動画を録っちゃいました(笑)。
…
56歳の今も「まだまだやりたいことがある」と走り続ける木山さん。その根っこには、「家族がいるんだから、大丈夫」という強い思いがあるようです。何度失敗しても起き上がり、ひたむきに夢を追いかける木山さんに勇気をもらえるインタビューでした。
PROFILE 木山裕策さん
きやま・ゆうさく。1968年、大阪府生まれ。2005年に甲状腺ガンの手術を受けて無事に成功。2007年、オーディション番組『歌スタ!!』に出演し、異例の2度目の挑戦で合格。2008年2月、家族をテーマにした楽曲「home」でメジャーデビュー。同年『第59回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす。2020年、独立し、以来、作詞作曲も積極的に手掛けるなど活躍の幅を広げる。2024年10月、新アルバム『贈る歌』を発売。著書に『home 家族と歌が僕を守ってくれた』がある。
取材・文/高梨真紀 写真提供/木山裕策