新婚時代からの「ティータイム」が家族6人の大切な時間
── 現在もかなりお忙しそうですが、普段大切にされている時間はありますか?
木山さん:夜のティータイムですね。27歳で結婚してから30年間、毎日続けています。僕も妻もお茶が好きなので、僕が好きなお菓子をコンビニで買って帰って、お菓子を食べながら夫婦で話すんです。夫婦ゲンカしていたってお茶は出てきます。怖いでしょ(笑)。
── 昨日の夜、私もちょうど夫とケンカして…今朝は話してないんですよ(苦笑)。
木山さん:お茶することで、仲直りもできるんですよね。ただ話すだけなんだけど。「今日、こんなことがあってね」とか「あのニュース見た?」とか。そういうなにげない会話がすごく大事だと思っています。僕たちがお茶しながら話していると、子どもたちも小学生になったころから入ってくるようになりました。よく「男の子はしゃべらないでしょ」って言われるけど、うちはみんなおしゃべりで。もちろん、みんな性格が違っていて、ガキ大将タイプ、おたくタイプといろいろですが、ティータイムは楽しいみたいです。
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── 新婚時代に始めたティータイムが、家族の大切な時間になっているんですね。
木山さん:はい。わが家のティータイムは、子どもにとっても安心して自分の気持ちを話せる時間になっているのかなとも思います。5分でも10分でも、家庭内で話せる時間や場所があるっていいと思うんです。日本では、昔から「男は黙って」を美学にする文化がありますが、それって男性を追いつめるだけだと思います。性別も性格も関係なく、「楽しい」「つらい」って言えたほうがいいと思いませんか?
子どもたちと20歳ごろまでしか一緒にいられないと考えると、家族で過ごせる時間なんてごくわずか。ティータイムがときどき悪口大会になることもありますが(笑)、悪口を言える場所が家庭にあるっていいと思うんです。それに、普段からいろんな話をしているから、子どもに何かあったときに「お前どうしたの?」って声をかけやすいし、子どもも打ち明けやすいと思ってくれるといいですよね。
将来、子どもが独り立ちしても、自分の正直な気持ちを話せて、相手の気持ちを聞くことさえできれば、どこでだって強く楽しく生きられるんじゃないかと思っています。
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家族に支えられながら歌手と会社員の両立生活を12年続けた木山さんでしたが、「やっぱり歌手として悔いのない人生を送りたい」と50歳で独立を決意したそうです。
PROFILE 木山裕策さん
きやま・ゆうさく。1968年、大阪府生まれ。2005年に甲状腺ガンの手術を受けて無事に成功。2007年、オーディション番組『歌スタ!!』に出演し、異例の2度目の挑戦で合格。2008年2月、家族をテーマにした楽曲「home」でメジャーデビュー。同年『第59回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす。2020年、独立し、以来、作詞作曲も積極的に手掛けるなど活躍の幅を広げる。2024年10月、新アルバム『贈る歌』を発売。著書に『home 家族と歌が僕を守ってくれた』がある。
取材・文/高梨真紀 写真提供/木山裕策