子どもがいれば自然と仲良く…とはいかないママ友づきあい。当たり障りない話題ばかりで、なかなかママ友に本音を話せないという人も少なくありません。漫画家の真船佳奈さんの最新作『正しいお母さんってなんですか!?』(幻冬舎刊)では、そんなママ友づきあいを含めた令和ママのリアルな育児の悩みを描き、話題になっています。(全2回中の2回)
ママ友づくりはマッチングアプリみたいな無理ゲーかも
── テレビ局員として働きながら漫画家も兼業し、自由でちょっぴり破天荒な人生を歩んできた真船さん。産前は「変わり者の称号がうれしかった」というほど自分の個性に肯定的だったそうですが、産後のママ友づくりでは、ヤバい人と思われないよう「無味無臭の無害な人」になろうとした、というエピソードが印象的でした。
真船さん:子どもを産んで孤独になるのはイヤだというのは、多くのママが感じていることだと思うんです。誰かと育児の話はしたいけど、そのためにはママ友をつくらないといけない。でも、それは今までの「好きだから一緒にいる」みたいな友人関係ではなくて、同じぐらいの子どもがいたり、近所だったりっていう条件が大切で。ママ友づきあいって、マッチングアプリで条件がマッチした人と「初めまして」で育児の話をするみたいな、結構な無理ゲーなんですよね。
![『正しいお母さんってなんですか!?』より](https://chanto.ismcdn.jp/mwimgs/1/b/780w/img_1bc72e7675efc594437577b62cbb88c1805228.jpg)
── 真船さんが母親教室で、初対面のママ友とおっぱいの悩みを語り合って打ち解けるシーンがありましたね。
真船さん:ファーストネームさえ知らないのに、その人の奥底を急に知ってしまう、みたいな。ママ友の関係性って不思議だなと当時は思っていました。
子どもが成長すると、発達の具合によって「うちの子はあまり寝ない」「ご飯を食べない」と悩みも違ってきますよね。そんなとき、ママ友の中で誰かが「うちの子、ご飯食べなくて」と打ち明けたりすると、ご飯を食べる子の親は「うちは食べますよ」とはマウントになりそうで言いにくい。それで、気を遣って自分の子の自虐をしたりするんですよね。そうするとだんだん、自分の子どもがすごくダメな子、みたいになってしまって。
ママ友関係では「マウント取っていると思われると嫌だな」「悩んでいるのが自分だけだったら嫌だな」と常に地雷を踏まないか心配で、なかなか本音で話せない。ママ友の中で浮いてしまったら、また誰にも育児の悩みが話せなくなるんじゃないか、というモヤモヤを抱えながら、ニコニコ当たり障りのない育児の話をして一緒にいる、みたいな関係性が当時はありました。
![『正しいお母さんってなんですか!?』より](https://chanto.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/780w/img_2f6e834d0fb4ec454f7a1612a2c6d8da699055.jpg)
── ママ友同士って、自己紹介するときも自分のことではなく子どものことを紹介したりして、自分自身のことは話さなかったりしますよね。
真船さん:そうですね。以前『名前をなくした女神』(フジテレビ系列)というドラマがありましたが、タイトル通り、母親は子どもを産むとたとえば「たろうくんママ」とかになって、ママ友同士で下の名前を知らないことも。母親は個性がない「子どもの黒子」のような存在になって、苦しくなってしまうんですよね。
── 真船さんが「漫画を描いている」と打ち明けたことがきっかけでママ友と打ち解けたこともあったそうですね。
真船さん:そうですね。ママ友関係も、子どもの話から一歩踏み込んで自分自身の話をするところまで行くと「実はおもしろい人なんだ」となることはありますよね。子どもを産まなかったら絶対出会えないタイプの人と出会えたり。
実は先日、作中に出てくるママ友・舞さんと初めて家族ぐるみで旅行に行ってきたんですけど、それはそれでいいものだなと思いました。大人が4人いるので、分担して子どもを見守れるし、子ども同士で遊んでくれるから大人は気兼ねなくリラックスできる。助け合いながら育児できるのはいいな、と今は思っています。