SNSでの批判を自分ごとと捉えてしまう場合も

── SNS上では、実際は一部の母親に対して批判されているのに、見ているほうは自分に言われているように感じてしまうこともあります。

 

真船さん:ありますよね。私は令和になって初めて母になったので、昭和や平成の子育ても、それぞれ大変なこともあったと思います。ただ、私が母になって感じるのは、令和にも令和の子育ての大変さがあるということで…。

 

今は子どもがすごく少なくなっているので、電車に乗っていても「100対1」くらいの割合で、ほとんどが大人です。かつ、子どもはいつ泣くかわからず大人がコントロールもできないので、親は爆弾を抱えるような気持ちで外出する。そんなときに「子連れはウザい」みたいなSNS上の投稿を目にしてしまうと、親としてはどんどん委縮してしまうんです。

 

たまに私も外出先で「パフォーマンス叱り」しちゃうんですよ。家の中だったら「まあいいや」と見守っているようなことでも、外出先では「あの母親はなんでしつけをしていないんだ」と思われるのが嫌で、先回りして子どもを叱っちゃうことがあるんですよね。

 

── わかります…!

 

真船さん:子育てあるあるですよね。そういう自分も嫌で、結局外に出なくなったり。でもSNSで叩かれるのが怖いから「つらい」と本音も言いにくい。それでどんどん窮屈になってしまう…というのが令和の育児の苦しさなんじゃないかと思います。

 

『正しいお母さんってなんですか!?』より
『正しいお母さんってなんですか!?』より

── SNSが出て本音が可視化されるようになったゆえに「迷惑だと思われているんじゃないか」と気にしすぎてしまう面はあるかもしれません。

 

真船さん:そうですよね。もちろん子どもに「外では静かにしないといけない」というルールは教えるものの、子どもとしても、家の中でOKだったことがなぜ外ではダメなのか、まだわかる年齢じゃなかったりしますよね。

 

だから外出先で急にママが怒りだして、子どももわけがわからず機嫌が悪くなり、結局「もう帰ろう」となる。だからお出かけに行くと、あんまりいい結果にならないなと思っているお母さんは多いんじゃないかと思います。

 

── 真船さんがSNSで批判されないように武装するうちに「もうお出かけは嫌だ」となってしまう様子が描かれていましたね。

 

真船さん:ママのタイプにもよるんですよね。SNSをやってないママは「そんな怖いこと思う人いるの?」みたいにあっけらかんとして、ベビーカーでどこでもお出かけしていたり。ただ、私はいまだにお出かけはすごく身構えちゃって、とにかく子どもを静かにさせるアイテムをめちゃくちゃ持っちゃうようなタイプなので。いまだにしんどいところはあります。

 

『正しいお母さんってなんですか!?』より
『正しいお母さんってなんですか!?』より

── 真船さんが「ちゃんとしたお母さんになろう」という呪縛から徐々に解けていく様子も描かれていますが、SNSの声に関しては、まだ折り合いをつけるのは難しいと感じていますか?

 

真船さん:難しいですね。SNS上にはいろんな考え方や経験をした人がいて、なかには自分が親にされて嫌だったことと重ね合わせて、怒りをぶつける人もいます。「こうするくらいなら産んでほしくなかった」という人もいて…。ただ、それぞれの家庭のことは、それぞれの家庭で向き合っていくしかない。他人に怒りをぶつけたり、言い返したりしても解決はしない。

 

心の平穏を保つためには、そういう投稿を目にしても「そういう人もいるんだな」くらいにとどめ、自分の子育てに集中することで自衛しています。

 

PROFILE 真船佳奈さん

まふね・かな。テレビ東京局員兼漫画家。2017年、AD時代の経験談をまとめた『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』で漫画家デビュー。平日はテレビ局員、休日は漫画家として活動。

 

取材・文/市岡ひかり 写真提供/真船佳奈