子どもたちを怒れることも「ものすごく幸せ」

── SNSやメディアを通じての発信以外に、始めたことはありますか?

 

えみりィーさん:私の講演会を聞いてくれた女性からメッセージをもらったのをきっかけに、病気の方の支援コミュニティ「SUN-ey」をインスタ上で結成しました。声をかけてくれた女性は妊娠中に悪性リンパ腫がわかり、抗がん剤を投与しながら出産して、いまは3歳の子どもを元気に育てています。

 

私ががんだと診断されたとき、同じ立場の人たちからアドバイスや励ましをたくさんいただき、がんを経験した人たちが夢に向かって進む姿がいちばんの治療薬だと感じたんです。私が元気をもらえたように、誰かを元気にしたいなと考えています。具体的には、気軽に集まれる交流会をしたり、質問があればSNSで共有して素早くいろんなメッセージがもらえるような場を作りました。がんだけでなく、子宮筋腫やいろんな病気の人が集まっています。「来月、手術だけどがんばってくるね」「退院したらみんなで集まろうね」と、励ましあっています。

 

── 仲間との交流や再会は治療を乗り切る目標になりますね。このコミュニティーでは、どんな質問が投げかけられましたか?

 

えみりィーさん:患者本人だけでなく、支えるまわりの人もコミュニティに入っています。ある男性が「彼女が乳がんだと診断されました。彼氏としてどんなことをしてあげるのがいいですか?」という質問をしていました。九州だけではなく、いろんな地域の方がいて、千葉県で入院が決まった女性が「病院の周辺で、1週間だけ子どもを預かってくれる場所を知りませんか」と、情報提供を求めたこともあります。

 

SNSでは、スピーディーにたくさんのコメントが返ってきます。ちょっとした心配ごとを少しでも減らせる、安心できるかけこみ寺みたいな場にしたいですね。私ひとりだと何もできないので、人の輪で力になれたらと思います。

 

── えみりィーさん自身が、がんの診断を受け、不安や孤独を感じていたからこそですね。がんを経験して、ご自身はどのように変化しましたか?

 

えみりィーさん:いちばん強く感じたのは、「ひとりじゃない」ということ。告知されたときは、「なぜ私だけが知らない病気になったの?」と孤独を感じましたが、いまは仲間がたくさんでき、人の輪が広がりました。また、自分が多くの人に支えられて生きていると気づかされました。そして、「明日が来るのが当たり前じゃない」ということ。だからこそ、今日という日を大切にしようと思います。いろんな人といっぱい話して、笑って過ごせるこの一日一日の時間を大事にしたいです。

 

病気になってよかったとは思わないけど、病気にはすごく感謝しています。病気にならなければ、ふつうに毎日を過ごしていたはずです。でも、その平凡な日常が、じつはとても幸せなんです。子どもたちを怒って、家のことでバタバタして…という毎日ですが、子どもたちを怒れるのも幸せ、大忙しで一緒にご飯を食べる時間も、本当はものすごく幸せなんです。

 

PROFILE えみりィーさん

熊本県・福岡県を中心に活躍するタレントで、3人の子どもを育てるママ。2019年6月に「多発性骨髄腫(血液のがん)」と診断を受け、翌年1月に自家末梢血幹細胞移植。出身地・芦北町の「あしきた親善大使」としても活動中。

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/えみりィー